岩手・宮城・福島の産業復興事例集30 2019-2020 東日本大震災から9年~持続可能な未来のために
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「物を売るだけではなく、参拝者をおもてなしするという要素が非常に強い。志波彦神社・鹽竈神社に手を合わせて参拝が終わった方が、鳥居から出られた瞬間から直なお会らいが始まるというイメージ。神事を終えて、茶屋に来て、おいしいものを食べるところまでがセットの思い出になり、さらに門前町を回遊してもらう流れをつくれれば」と意気込む。矢部園茶舗の現在の店舗は、海岸通の再開発事業のため、取り壊しが決まっている。2020年5月の連休後には解体し、土地をならして2階建てとして2021年3月にオープンする計画。「塩竈を愛している」という気持ちを前面に押し出した、日本茶特化型専門店を目指す。「お客さまにゆっくりと楽しんでいただき、笑顔になってもらえるような、懐かしくも新しい展開を目指している」と構想を少しだけ明かしてくれた。東日本大震災で大きな被害を受けても、塩竈で営業を続けること、暮らすことへの気持ちはみじんも揺るがなかった。そして今、「塩竈のまちを自分たちの次の世代に、もっといい形で渡していかなくてはいけない」という思いが胸に押し寄せている。「自分が亡くなるときに、これからの人たちが胸を張って暮らせるまちの土台をつくることができたと思えるかどうか。そう問い掛けながらこれまでやってきました」。その思いはこれからも変わらない。現在51歳の矢部氏は、これからを「黄金の10年」にしたいという。たくさんの人が訪れて、たくさんの出会いがあって、人生の思い出がたくさんできるようなまちにするためのにぎわいをつくっていく。10年後「おいしいお茶はどこで買えるの?」と聞かれた人が、「矢部園さんだよ」と答えてくれる。そんなやりとりが聞こえる様子を思い描きながら。より良いまちを残すためこれからを黄金の10年に1店内は温もりに包まれてくつろげる雰囲気があふれる2東日本大震災の日付が刻まれた茶匠の認定証3整然と並べられた急須からは美しさすら感じる4茶匠のお茶を入れる所作には思わず見とれてしまう5茶匠が厳選した茶葉はいずれも逸品ぞろい6店員のもてなしを受けながら、気軽にお茶を楽しめる7お茶の魅力を引き立てる茶器類も多数取り扱っている8オリジナルのペットボトル入り茶「茶摘み」と「伊達茶」65海岸通の再開発事業JR本塩釜駅前の大規模再開発事業。住宅棟・商業施設・業務棟・駐車場棟で構成される。商業施設「塩竈・直会横丁」は、門前横丁や古き良き港町の風景を織り交ぜた街並みをデザイン。134復興五輪新分野/新市場/海外進出観光振興/地域交流拡大事業承継被災地での再生・創業/被災地への進出87日本茶を売るだけではなく真心を楽しむ経験を提供丁寧に淹れた日本茶は、心身を癒す温かさがあります。矢部園茶舗さんは被災のさなか、そのかけがえのなさを再認識しました。茶を通じて真心を楽しむ経験を提供し、元気を港町に与え続けています。成功のポイントディープな文化を楽しみながら国内外の観光客を惹きつける外国人観光上級者だけでなく、復興を応援しながら東北のディープな文化を楽しみたい日本人観光客が、地域の産業や文化に関する情報と心意気に触れ、交流する拠点に活用されることを期待!期待するポイント監修委員によるコメントと評価額田春華氏監修委員73

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