岩手・宮城・福島の産業復興事例集30 2019-2020 東日本大震災から9年~持続可能な未来のために
69/145

ティー機能を備えた常設のゴミ回収拠点を設置して、ゴミ出しを通して地域の関係性をつくる実証実験を行った。また、NECソリューションイノベータ株式会社と共同し、ICTを活用した生ゴミ分別の参加状況可視化実験も実施。地区別に生ゴミ分別状況と回収量のデータを収集し、分析結果を住民と共有して、参加の動機付けを狙うなど、南三陸BIOへのゴミ出しをさらに根付かせる取り組みも行っている。「自分たちの出した生ゴミが液肥となって農産物を育て、食卓に戻ってくるという循環を、いかに見えるようにするか。ゴミ分別の手間を軽減して、回収率を上げることが今後の課題です」と藤田氏。バイオマス産業都市構想の試みは、南三陸BIOだけにとどまらない。町内の約1,500haの山林がFSC®、県漁協志津川支所戸倉出張所のカキ養殖場がASCという国際認証を取得した。実はアミタはFSC®の認証審査会社、ASCの認証審査機関でもある。FSC®とASCを同時に認証された自治体は、南三陸町が世界初だという。南三陸町の約77%を占める山林からもたらされるミネラル豊富な水が川を伝って海へと流れ、水産物の栄養となる。町の主要産業である第1次産業はこの山林あってこそのため、南三陸町は2015年に森林資源を適切に管理・利用すべく、FSC®認証を取得。2017年8月に竣工した南三陸町の新庁舎は、震災復興計画やバイオマス産業都市構想に沿って建築資材や家具にFSC®認証を受けた地元産の木材が多く使われており、復興に寄与する町役場として生まれ変わった。及川氏はこう語る。「南三陸は森林に囲まれた地域なので、木材は豊富にあります。バイオマス産業都市構想のもう一つの柱として、木材から作った木質ペレットをどう使っていくかを、アミタと町で一緒に考えています。森がきれいにならないと海もきれいにならず、その逆も言えます。今まで以上に海・山・里をスマートに連携させていくことが、バイオマス産業都市構想の今後の課題です」。自治体として初めてFSC®とASCを同時に取得1南三陸BIOに運び込まれた生ゴミは、スタッフの手で異物が混入されていないかチェック2生ゴミ回収用のバケツを整理 3子どもたちから寄せられたメッセージ4生ゴミ回収に協力している店舗に贈られるちょうちん5南三陸町とアミタをつなぎ、南三陸BIO稼働までの陣頭指揮をとったアミタホールディングス株式会社専務取締役の佐藤氏62015年から南三陸BIO所長を務める藤田氏7アミタと二人三脚で産業都市構想を進めている南三陸町企画課課長の及川氏8南三陸町本庁舎はFSC®認証を受けた南三陸杉を至る所に使用しているASC「Aquaculture Stewardship Council(水産養殖管理協議会)」の略。環境に負担を掛けず地域社会に配慮して操業している養殖業に対する、国際的な認証制度。復興五輪新分野/新市場/海外進出観光振興/地域交流拡大事業承継被災地での再生・創業/被災地への進出4857612自治体と住民を巻き込んだ資源循環型ビジネス自治体と協力しながらバイオガス施設の運営を行うだけでなく、高い分別精度、農業への液肥提供等、地域住民と農業を巻き込んだ資源循環型ビジネスを構築しているところがポイントです。成功のポイント事業の効果を見える化してさらなる協力体制を同施設の収支以外に、地域全体のエネルギー収支、雇用効果、農業への貢献度、地域経済波及効果等の「見える化」を行い、更に数値目標を設定して地域住民の協力体制の維持を図ってほしいです。期待するポイント監修委員によるコメントと評価柳井雅也氏監修委員69

元のページ  ../index.html#69

このブックを見る