岩手・宮城・福島の産業復興事例集30 2019-2020 東日本大震災から9年~持続可能な未来のために
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3て、甘いレタス、歯応えのあるレタスなど、特色のあるレタス作りにも取り組んでいます。田中 お話を聞いていると、工場栽培はまだまだ大きな可能性を秘めているようで、ワクワクしてきます。ぜひいろいろなことにチャレンジしていただいて、川内村を盛り上げていってください。田中 最後に、石巻市の電子機器メーカー、ヤグチ電子工業株式会社の佐藤さんのお話を伺います。佐藤 弊社は大手電機メーカーの協力会社としてOEM事業が中心だったのですが、東日本大震災を機に自社製品の開発に乗り出しました。最初に手掛けたのがスマートフォン接続型の放射線量計で、これは10万台以上売り上げました。 今日ご紹介させていただくのは「オクルパッド」という医療機器です。開発のきっかけは、従業員がテレビの修理を頼んできたことでした。そのとき、表面の偏光フィルムを剥がすと画面は真っ白になるのですが、剥がしたフィルムを通せばちゃんと見えるということに気付きました。「これは面白い」ということで、製品化を考えました。最初は「見えない液晶」として広告分野で使ってもらっていましたが、北里大学の半田知也教授から「この技術は医療機器として使えるから、ぜひ一緒にやらないか」というお話をいただき、新製品につながったのです。石垣 こちらがオクルパッドで、裸眼では何も見えませんが、このメガネをかけていただくと画面が見えるという、特殊な液晶ディスプレイになっています。子どもの弱視治療に使われ、国内の半分くらいの眼科医に導入されています。 片方の目の視力が極端に弱いと「弱視」と診断されますが、約3%が罹患する疾患で、視力の弱い方の目だけに刺激を与える治療を行うことで治るとされています。ただし、6歳くらいまでに治療を始めないと効果がありません。(写真4)田中 これまでの治療は、片目に田中 コスト面では、何が大きな負担になっているのでしょうか。早川 生産を始めた当時はLEDによる栽培の精度が不安定で、主に蛍光灯を使っていたこともあり、電気代が非常にかかっていました。また、照明が発熱しますから栽培室を冷やす必要があり、エアコンの電気代もずいぶんかかっています。2018年にLEDの栽培室を増やして電気代を半分に圧縮しましたが、さらなる生産コストの削減は大きな課題です。田中 価格ではなく、品質で勝負しようということですね。早川 無農薬で作りますから、洗わないで食べることができ、しかも露地物に比べ日持ちがします。ですから、私共のレタスは、主に業務用に使われています。(写真3)兼子 えぐ味が少ないのも特長で、「野菜は嫌いだけどKiMiDoRiのレタスなら食べられる」という声をたくさんいただいています。 レタスは、LED照明の色を変えることによって、育ち方も味も変わってきます。今、その性質を使っ北里大教授との連携が、医療機器開発につながった「野菜工場での生産は、露地栽培と違い、収穫する時期と量を管理することができ、一年中同じ品質のものを作れます」(早川氏)6

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