岩手・宮城・福島の産業復興事例集30 2019-2020 東日本大震災から9年~持続可能な未来のために
43/145

関する包括連携協定などだ。舞台ファームが今まで実践してきた農業の事業化の種を、ほかの地域でもまき始めている。針生氏は、自分のビジネス論を「TPPA」と表現する。「T…徹底的に、P…ぱくって、P…ぱくり倒して、A…アレンジする。良い事例はどんどんまねするべきです。同じことをやっても、事業内容や人が違えば何か新しいものが生まれるはず。最初はまねでいいので、そこから自分なりのやり方を発展させていけばいいんです」。舞台ファームは、アイリスオーヤマ株式会社と舞台アグリイノベーション株式会社を共同で設立。東北や北海道の米をパッケージ化して販売しており、そのために日本最大級の精米工場を建設した。「アイリスオーヤマの大山健太郎会長は、東北を代表する経営者として尊敬している方です。あの方の大局的な視点からは、まだまだ学ぶことがたくさんあります」。東日本大震災以降、競争するよりも共助の関係をつくることが大切だと考えるようになったという針生氏。TPPAの理念で成功事例を貪欲に吸収して、日本の農業を徹底的に効率化し、改善していくことを、日々考えている。「農業に限らず、今の日本は高齢化と人材不足に見舞われているので、それを解決するための人材育成が急務です。マネジメントができるホワイトカラー、オペレーションができるブルーカラーといった、今までの人材の役割を分ける考え方は、通用しなくなってくるでしょう。舞台ファームでは、その2種類の能力を兼ね備えた農業人材『グリーンカラー』の育成を行っています。年功序列ではなく、追い越し車線のある出世コースをつくりたい。さらに3車線目の高速道路の出世コースも設け、優秀な人材はどんどん登用したいですね」。日本農業の未来のためにハイブリッド人材を育成1舞台ファームの本社社屋と自社工場。周囲には広大な農地が広がる2自社トラックで配送も行っている3大手コンビニに納めるカット野菜は、専用の工場でつくられている4カット野菜の原料を取り扱う作業員5オフィスの隣にはビニールハウスがあり、地元の農家らしい一面も6過去には農林水産大臣や復興副大臣が視察に訪れた7アイリスオーヤマとの共同会社「舞台アグリイノベーション」で精米された商品8代表取締役の針生氏は、食の6次産業プロデューサー(愛称:食Pro.)として高度な専門性を備えたと認定される「レベル5」を取得5687アイリスオーヤマ株式会社仙台市に本社を置く、生活用品の開発・製造・販売を手掛ける企業。世界各地にある自社工場で家電や収納をはじめとする生活に役立つ多彩な商品を生産、手ごろな価格で販売している。06復興五輪新分野/新市場/海外進出観光振興/地域交流拡大事業承継被災地での再生・創業/被災地への進出「競争から共助」への転換で拓いた新たなステージ各地の「6次産業モデル」が結局1+2+3の足し算にとどまっていることが多い中、ほかのモデルを徹底的に研究し、分野を超えて共助の関係を築くことで、「6×6」のかけ算の領域を切り開いています。成功のポイントグリーンカラーはコースも人も規格外にこれまでの延長線上にはない、規格外のマーケット戦略・人材戦略を期待します。「追い越し車線」を走りたい新たな人材を確保し、さらにバイパスや新たな行き先の開拓も期待したいです。期待するポイント監修委員によるコメントと評価田村太郎氏監修委員43

元のページ  ../index.html#43

このブックを見る