岩手・宮城・福島の産業復興事例集30 2019-2020 東日本大震災から9年~持続可能な未来のために
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1て造ったしょうゆ「奇跡の醤」を持参しました。ぜひ味わっていただきたいと思います。田中 これはうまい! 初めて口にするおいしさです。しょうゆは、非常に深い味がします。(写真1) 長い歴史を持つ日本の発酵と醸造の文化は、みそ、しょうゆ、酒だけでなく、多種多様な食品を生み出しています。それらを、どんどん世界に広めていってください。田中 次に、株式会社菅野漬物食品の菅野さんのお話を伺いたいと思います。菅野漬物さんは福島県の南相馬市にあり、福島第一原子力発電所の事故の影響も大きかったのではないでしょうか。菅野 弊社は、1940年の創業以来、南相馬で漬物を作っております。福島第一原子力発電所からは32㎞で3月14日に爆発事故が発生したため、危険と判断し、社員に避難を促し、会社を再開したのは4月4日でした。には若い起業家が興した新しい会社も加わってくれています。 陸前高田は「SDGs未来都市」に選ばれていまして、市民みんなが「SDGsの目標を発酵とオーガニックで達成するんだ」と意気込んでいます。その取り組みを世界にPRするとともに、世界に認められる品質のものを作って売っていこうと、みんなで話し合っているところです。田中 ただ待つのではなく、こちらから世界に打って出るのですね。発酵食品は世界中にあります。そこからヒントを得ることで、新たなニーズを掘り起こせるかもしれませんね。河野 商品を売るだけでなく、東北に海外の方々の誘客を図りたいと考えています。仙台空港から陸前高田までは復興道路で約140㎞です。海外からのお客さまを迎えて、陸前高田の産業を再生させようという夢を描いています。 本日は、弊社のみそを使って一関市の館ヶ森アーク牧場と共同で作ったスイーツ「みそパンデロウ」と、生き残っていたもろみを使っ時代に合った商品を開発しBtoCへと売り方も変えた「東日本大震災から9年がたち、2020年秋、ようやく元居た地に本社が戻ります。みそ工場も新しく建てる予定です」(河野氏) 原発に近いということで、多くのスーパーやコンビニで商品を扱っていただけなくなってしまい、売り上げが大きく落ち込みました。さらに、豆腐屋さんが避難して材料の供給が止まり、主力商品の一つ「豆腐のみそ漬」が作れなくなってしまったのです。どうしようか考えていたときに、クリームチーズで味噌漬けを作ってみようというアイデアが出て、2011年の12月に「クリームチーズのみそ漬」を発売しました。おかげさまで「クリームチーズのみそ漬」は評判もよく、売り上げも好調で、2018年にはJR東日本のおみやげグランプリで、東北地方から唯一の入賞を果たしています。 漬物業界全体としても売り上げが落ちている中で、どういった漬け物が今の食文化に合うのかを追求して商品開発に取り組み、「あん肝のみそ漬」や「燻鴨のみそ漬」など、ラインアップを毎年増やしています。 一方で、販路の開拓にも力を入れ、BtoBからBtoCという方向性で、お客さまへの直接販売を強化4

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