岩手・宮城・福島の産業復興事例集30 2019-2020 東日本大震災から9年~持続可能な未来のために
39/145

という。ゼリーの原材料に地元の農産物を利用することもでき、「LIFE STOCK」というひとつの製品を多方面に展開させていくのは、島田氏の経営手腕のなせる技と言えるだろう。さらに島田氏は、地域の防災安全度を診断し備蓄状況をシミュレーションするシステムを、現在開発中だという。「医療法人や銀行、システム開発会社などから出資を受けています。この防災システムを完成させて、日本の防災研究所に相当する会社を目指しているんです。東北の枠組みを超えて世界のどこでも通用する防災ソリューションを構築して、宮城から上場企業になることを目指しています」。ワンテーブルは防災というテーマで既存のビジネスやルールにイノベーションを起こそうとしている。「例えば、災害警報を発して体制を整えることにもコストがかかります。もし被害が少なければ、コストをかけただけという結果になってしまうのですが、そのリスクを恐れて命が失われてしまっては駄目ですよね。そこで、コストを補ほ塡てんする保険を作ろうと考えています。その保険に入っていれば、リスクを恐れず防災オペレーションを実行できるでしょう」。島田氏はワンテーブルの事業に、「基準づくり」「ものづくり」「仕組み・システム・組織づくり」「文化づくり」の4つの柱を定めた。「私たちが定めた基準に沿って、必要な“もの”と“仕組み・システム・組織”をつくります。防災でいえば“もの”はLIFE STOCKで、“仕組み・システム・組織”は防災システムとそれを運用するチームですね。それが東北から日本、世界へと広まることで、ひとつの文化を形成していければ」。ゆくゆくは、自分たちのつくった防災システムで世界中の命を救いたいと島田氏は語る。「防災の現場で見た・聞いた・感じた課題を、4つの“つくる”柱で解決していくことがワンテーブルのミッションです。あの被災から立ち上がってきた自分たちだからこそ、本当の意味で“命を救う”システムをつくり上げることができるはず。それが被災から10年を経て私が世界に見せたい答えです」。東北の枠組みを超えて世界に通用するシステムをワンテーブルの指針を定める4つの柱1「あのとき、ほんとうに欲しかったもの」として開発されたゼリー状の備蓄食「LIFE STOCK」2多賀城工場で稼働する「LIFE STOCK」充じゅう塡てん装置。TOKINAXの心臓部に当たる3名取市の「rokufarm ATALATA」は地域に雇用とにぎわいを生み出す4「SHICHI NO Cafe & Pizza」の広々とした店内からは雄大なオーシャンビューを楽しめる5道の駅ならぬ“うみの駅”として、SHICHI NO RESORTの訪問客を出迎える「七のや」6七のやの食堂でいただける、宮城名物「はらこ飯」45605復興五輪新分野/新市場/海外進出観光振興/地域交流拡大事業承継被災地での再生・創業/被災地への進出備蓄食ゼリーLIFE STOCKと地域の拠点としてのアタラタ乾燥パウダー技術を備蓄ゼリーに展開し、その備蓄システムの構築で参入障壁を高くしています。またロクファーム アタラタで祭り、食育活動、英語保育所の経営等を行い、地域住民の信頼を得ています。成功のポイント宇宙食への参入を通して新業態への展開を期待宇宙食への参入は栄養確保、ストレス低減、パフォーマンス向上、容器の工夫、さらなる長期保存等の技術的リターンが見込め、さらなる高機能備蓄商品開発や、新業態への展開にも役立つと考えます。期待するポイント監修委員によるコメントと評価柳井雅也氏監修委員39

元のページ  ../index.html#39

このブックを見る