岩手・宮城・福島の産業復興事例集30 2019-2020 東日本大震災から9年~持続可能な未来のために
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として大きな注目を集めている製品だ。宇宙食としての可能性も秘めており、JAXAと連携していることでも知られる。「被災で友人や家族といった大切なものを失い、何よりも大切なことは命を守ることだと改めて思い知りました。乾パンでは赤ちゃんやお年寄りなど、固形物を食べられない人の命が守れない。この問題を解決する方法は何かを考え抜いた成果が『LIFE STOCK』なんです」。東日本大震災は、一次産業のプロデューサーだった島田氏が、自らがプレーヤーとして防災の課題を解決しようと決断したターニングポイントになった。島田氏は東日本大震災後、 被災地の名取市に「rロクファームokufarm AアタラタTALATA」、七ヶ浜町に「SシチHICHI NノO RリゾートESORT」といった商業施設をプロデュース。これらは地元の人や観光客が集まる場として、地域ににぎわいを生み出している。ATALATAは被災地の新たな雇用と東北の再生モデルの創出を目指す「東北ロクプロジェクト」から生まれた6次産業化モデルファームだ。食の生産・加工・販売を一つの場所で体験できる場で、学生時代から培った島田氏のビジネスノウハウが惜しみなく注ぎ込まれている。SHICHI NO RESORTは日本三景の一つとして知られる松島湾に面した新しいリゾートエリアだ。仙台市から自動車で約40分という好アクセスでありながら、静かで隠れ家的な雰囲気に包まれている。防潮堤よりも海側に建てられたホテルからは、松島が一望できるオーシャンビューが楽しめる。被災地に新たな商業拠点を作り、今までにない備蓄食を生み出した島田氏だが「もうすぐ東日本大震災から10年、東北および日本は何を学んで、何を生み出したか世界に見せなければいけない」として、さらに先を見据えて動いている。「この東北を新しい事業や産業が生まれる地域にしないと、人は戻ってこないし、新しい人も来てくれません。そこで『防災』というテーマでさまざまなプランを立て、いろいろな企業に声を掛けています。備蓄ゼリーの『LIFE STOCK』も、備蓄食というのは一面でしかなく、未開封であることが一目で分かるので安心して食べられることから、テロ対策にもなります。常温で5年間の備蓄を可能にした技術に『時をなくす➡TトキナックスOKINAX』と名付けて、応用する取り組みも進めています。美容や医療など多くの企業からオファーが殺到しているので、自社工場がフル稼働しても生産が間に合わないんですよ」。今後、多賀城市にあるワンテーブルの自社工場を拡張する予定だ名取市と七ヶ浜町に新たなにぎわいを創出5年間の保存技術をほかの分野に応用していくLIFE STOCKはパッケージを変えればノベルティグッズになるので、企業にとって広報ツールとして導入しやすい1TOKINAX研究開発に5年を費やし完成した充填技術。充填技術、アルミを含む4層構造のフィルムによる包装素材と形状、レシピコントロール技術を組み合わせて5年半の賞味期限を実現した。宮城2338

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