岩手・宮城・福島の産業復興事例集30 2019-2020 東日本大震災から9年~持続可能な未来のために
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[SDGs]2030年に向けて株式会社ワンテーブルは、東日本大震災後の2016年に設立された新しい会社だ。代表取締役の島田昌幸氏は、学生時代からベンチャービジネスを興してきたという生粋の起業家。生まれ故郷の北海道では、農業と教育をミックスした自然に触れながらの体験学習教室を手掛けていたという。「実際に土を触ったことのない子どもが、理科や農業の勉強するのはおかしいと思ったんです。そこで実際に自然に触れながらの受験勉強スタイルを企画したところ、好評を博しまして。たくさんの子どもたちを連れてくるから、行く先々であいつは何者だと注目されていましたね」。北海道で活動する島田氏と東北を結び付けたのは、株式会社舞台ファームとの出会いだった。「農業は流通と深く関わっていますから、必然的に流通ビジネスも手掛けるようになっていきました。そうなると既存の流通と対立するところが出てくるので、かなり叩かれたこともあります」。「北海道で活躍している若手経営者がいる」。そんな噂を聞きつけたのが、舞台ファームの針はり生う信夫社長だ。針生氏は島田氏の才能に注目し、2010年に島田氏を仙台へ連れてきた。北海道から宮城県へ拠点を移した島田氏は地元農家と連携した事業を開始し、2010年には1次産業をプロデュースする事業を手掛けていた。東日本大震災が起こったのは、その矢先だった。「被災で既存の流通網が崩壊して大手スーパーやコンビニがどこも品切れになる中、山形や内陸の農家さんたちが野菜を届けてくれたんです。いつもと同じように野菜が手に入る流通網が生命線だと、改めて考えさせられました」。島田氏も被災者でありながら、自ら避難所を回って物資をやりくりした。そこで目の当たりにしたのが備蓄食のあり方だった。「備蓄食といえば乾パンやクッキー、ビスケットが多いですよね。これらは硬いし食べるのに水分を必要とするので、赤ちゃんやお年寄りには食べられない人もいる。また、炭水化物ばかりで栄養バランスも良くありません。そんな問題に対する一つの解答として作ったのが、備蓄食ゼリー『LライフIFE SストックTOCK』です」。「LIFE STOCK」は常温で5年間備蓄が可能で、カロリー以外にもビタミンや食物繊維などの栄養バランスにも配慮し、幼児やお年寄り、療養中の人も摂取しやすい備蓄食北海道での活躍が噂になり東北に縁ができた避難所でじかに見た課題を解決する新たな備蓄食株式会社舞台ファーム仙台市若林区にある農地所有適格法人。生産から加工・販売、農業経営のコンサルティングなど手広く手掛ける“農業商社”を名乗る(P.40にて事例紹介)。山形や内陸の農家さんたち仙台市と山形市は隣接した県庁所在地同士。両地の特産品を集めて開かれる「仙山交流味祭」が開催されるなど交流が盛ん。2030年復興への歩み[売上高(百万円)]JAXAとパートナーシップを組んで行う「防災×宇宙」の視点から新たな事業創出や社会課題解決に取り組むプロジェクト「BOSAI SPACE FOOD PROJECT(BSFP)」の推進を通して、紛争地や難民キャンプなどで起こっている課題の解決を目指す。世界中の極限状態の課題解決を図る【目指していくゴール】※3〜翌2月500●12月七ヶ浜町に「SHICHI NO RESORT」をオープン2017年600●8月JAXAとの共創活動「BOSAI SPACEFOOD PROJECT」がスタート2018年800●9月備蓄食「LIFE STOCK」を発売2019年1,500(見込み)2020年3002016年●株式会社ワンテーブルを設立057501,50005002501,0001,250復興五輪新分野/新市場/海外進出観光振興/地域交流拡大事業承継被災地での再生・創業/被災地への進出37

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