岩手・宮城・福島の産業復興事例集30 2019-2020 東日本大震災から9年~持続可能な未来のために
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ると何年もしないうちに剝げてくる。自然塗料に関しても、顧客満足度の低い商品があふれていました。そこで考えたのは、既存のものよりも圧倒的に安全性が高いものを作ろうということ。そして、色にバリエーションを持たせようということでした。そうして始めたのが、短所の少ない『国産の自然塗料』の開発でした」。2007年から取り組んだ国産自然塗料が2012年に完成。「U-OIL」という名称で市場投入を果たす。主成分は食用にも使われる亜麻仁油。当初はスタンダード(屋内専用)だけだったが、ハード(屋内・屋外共用)、スーパーハード(屋外専用)も商品化。現在、スタンダードは35色、ハード、スーパーハードは66色という幅広い色展開をしている。他社製品と比べ値段は高いが、その品質の高さとバリエーションの豊富さが評価され、市場での存在感は大きい。「一般的にメーカーというのは『少品種大量生産』で効率良くビジネスを展開しようとしますが、シオンがやっているのはその逆、『多品種少量生産』です」と石川氏が言う通り、シオンほどの色種をそろえる競合他社は無い。注文を受けてから製造し、要望に合わせて最小170㏄の小ロットで販売しているのもシオンならでは。「大規模発注でなくても好みの塗料が手に入る」と顧客からは喜びの声が届くが、メーカー側にもメリットはある。少量の受注生産方式のため、多くのメーカーが頭を悩ませる在庫の問題がないのだ。各既存製品のブラッシュアップを行いつつも、事業の幅を広げるために、時代の潮流に合わせた新製品開発にも積極的だ。屋内・屋外共用塗料「U-OILハード」の耐候性の高さが評価され、新国立競技場の木製椅子に使う塗料としてプレゼンテーションの機会を得た。加えて、神宮外苑の木製ジャングルジム火災事故を受け、耐久性がより高く、塗るだけで木材を燃えにくくする新塗料の開発を進めることになる。2016年11月ごろに仕様が固まり、2017年4月から1年間、東経連ビジネスセンターの支援を受け、「木守り専科(防炎)」 「木守り専科(耐候)」を開発。10月に市場導入を行った。新国立競技場での採用はならなかったものの、2019年ラグビーワールドカップ会場となった釜石鵜うの住すま居い復興スタジアム(釜石市)には「木守り専科(耐候)」が木製椅子の塗料として使われた。2018年からは「木守り専科(防炎)」を上回る耐火性能を持つ、「木守り専科(防火)」の開発に着手。いわて産学連携推進協議会からの助成を受けながら、2020年夏には新商品として発売する見込みだ。販路拡大にも注力している。自然塗料に理解の深い欧米圏はもとより、中国、韓国といった東アジアにも目を向けている。欧米は石川新製品開発にも意欲的海外進出も視野に入れる1「U-OIL」亜麻仁油、天然顔料などの自然素材を用いた木材用の自然塗料。安全性が高く、女性や子どもも安心して利用できる。優れた乾燥性で施工しやすく、臭いも極めて少ないのが特徴。岩手23420

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