岩手・宮城・福島の産業復興事例集30 2019-2020 東日本大震災から9年~持続可能な未来のために
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本質に立ち戻ったイノベーションはすてき。日本の原点を感じさせるのが東北の良さだと思います (額田)成功したリーダーに共通しているのは、従業員や仲間に対して目標を与えていることです (柳井)DiscussionDiscussionかりやすく小分けにして従業員に与えています。そこがうまくいった企業ほど、復活がうまくいったように思います。柳井 SNSなどの情報発信のツールの進化や普及に対しては、どのような対応をすべきでしょうか?弓削 浅草では、観光客に道を聞かれることが少なくなりました。誰もがスマホを見ているからです。ですから、いかにスマホで見る情報に加工するかが重要。ポータルサイトに広告を出すなど、スマホの中でいかに情報を得てもらえるかという仕組み・仕掛けつくりを考えるといいと思います。田村 5Gの時代になると、情報は静止画から動画に変わっていきます。今まで発信してきた東北の景色や海産物などは、静止画の時代のもので、動画になると、人にもっとフォーカスを当てることが必要です。ボランティアなどで東北に行った人は、誰もが東北は人がいいといいます。その人の良さを動画で見せることができます。柳井 SDGsの観点から、復興に注目することも求められるようになってきましたね。田村 元々の東北の魅力、元々の東北の価値を日常化させて、持続柳井 東日本大震災の発生から9年目に入り、はっきりしてきたことは、震災の前から準備していた人の事業にうまくいっている例が多いということです。宮城県の石巻魚市場の須能社長も、10年以上前からHハサップACCPを研究していたというし、戸倉のカキ部会も相当前から考えていたことを実行に移したと思います。ただ、リーダーのタイプには、将来を見越して粘り強く取り組んでいるタイプと、情熱が前面に出て、とにかく走りながら考え、そこにアイデアやチャンスが張り付いたというタイプがいたと思います。一方、被災地の外から来て仕事を始めた人たちは、宇和島から来て福島県で接ぎ木をしていろいろな野菜の生産に挑戦している例(ベルグ福島)も、岩手県の一関でエタノールの製造に取り組んでいる例(ファーメンステーション)も、宮城県仙台市でスケートリンクを経営している例(アイスリンク仙台)も、それぞれ大変な経験をしながらも、被災地にビジネスチャンス、商機を見出していると思います。彼らに共通しているのは、従業員や仲間に対して目標を与えていることです。従業員に復興という大きいテーマをそのまま与えてしまうと、彼らはどう動いていいのか分かりません。優れたリーダーは、仕事を分企業・団体を復活に導くリーダーの条件と役割5G時代における情報発信のあり方とは可能なものにしていくことが必要と思います。それと、SDGsは環境の側面がこれまで注目されてきましたが、人権も重要なテーマです。環境に良くないものを調達しないのは当然で、それに加えて、ヨーロッパなどでは、誰がつくっているのかにも考慮するようになり、品質が良くても、休みなく働いているような企業からは調達しないということになってきています。そうすると戸倉のように、しっかりと働き方改革も行い、持続可能な産業として定着させれば、ここで調達したいということになります。柳井 実は日本は昔からSDGsに取り組んでいます。特に東北には、自然発生的な集落が残っている地域があって、その姿はそのまま循環型社会です。田村 すでに取り組んでいるという点ではダイバーシティ(多様性)もそうです。地方の中小企業は、なかなか人を採用できないので、いろいろな人が働いています。そうした企業はダイバーシティとはいっていませんし、その価値に気づいていませんが、実際に多様な人が働いています。今までSDGsという視点では見ていなかっただけなのです。戸倉のカキのように、国際認証という視点に照らし合わせて事業を見ると、もちろん足りないことはあるでしょうが、今までのやり方で良かったという部分も見つかるはずです。改めてSDGsの視点で事業を見たり、原点にSDGsから改めて考える東北の企業運営や事業15

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