岩手・宮城・福島の産業復興事例集30 2019-2020 東日本大震災から9年~持続可能な未来のために
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被災した企業が復興に向かううえで、ポイントとなるのは、スタッフの意見を経営者が参考にしたかどうかだ。というのも、経営判断はもちろん経営者が下すものだが、自社の存在理由や強み、顧客のことなどについて、しっかりと把握できていない経営者もいて、むしろスタッフの方がよく理解しているケースも少なくないからだ。特に製造や営業の第一線にいるスタッフは、自社の可能性などについてシビアにとらえることができていて、顧客のこともよく見えていることが考えられるので、彼らと相談することで、復興計画を掘り下げることができるはずだ。また、自社の将来について、スタッフの家族が不安を覚えるということもよくあるので、経営者はスタッフの家族も視野に入れて、事業計画を策定し、方針を明らかにする必要がある。いずれにしても「ヒト」は、事業の根幹であり、スタッフが安心して働ける環境の整備には、最優先で取り組む必要がある。スタッフの意見を聞くことが復興計画に欠かせないポイント被災したため、社員の通勤時間が長くなり、心身の疲労から退社する者もいた身内や近所の人だけで仕事をしてきたため、人材の採用がどれほど難しいかが分かった住居環境の整備が不十分で、新規スタッフを採用したくてもできなかった新規採用はできたが、復旧作業を優先したため、育成がおろそかになった福島第一原子力発電所の事故の影響で数名が退職。社員の心のケアや生活支援をすべきだった社員教育の前に、社内の組織体制を見直すべきだった希望退職で多くのベテラン社員が退職し、技術力の低下を招いたスタッフが高齢化し、従業員育成に焦りを感じている国や県の支援施策情報を正しく入手することができなかった補助金制度に関する書類を作成できる人材が不足した従業員や家族の被災新規従業員の採用難従業員の解雇・離職従業員のモチベーション低下復興や補助金についてのアドバイザー確保「あれは失敗だった」と感じることQ復旧・復興をしていくうえでどのような「ヒト」の課題がありましたか[複数回答可]ヒト 従業員の安全と 134

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