岩手・宮城・福島の産業復興事例集30 2019-2020 東日本大震災から9年~持続可能な未来のために
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アンケートによると、事業継続のハードルになったものは、「モノ」「お金」「ヒト」の順になった。津波の被害を目の当たりにした経営者にとって、工場などの設備や製品の喪失がいかにショッキングなもので、事業再建に向けた資金の調達がいかに大変だったかを示す結果ともいえる。しかし、「モノ」や「お金」の課題は、突き詰めると「ヒト」に帰結する。「ヒト」が重要と即座に見抜き、スタッフのケアやアドバイザーなどとの連携に、いち早く動いた企業ほど、リカバリーも早かったのではないだろうか。Qヒト、モノ、お金事業継続においてもっともハードルになったのは?設備喪失・資金調達の苦労が目立つもまず考えたい「ヒト」の課題1957年創業、1961年9月に法人改組した一般製材業者。地元八戸市内の建設業者や大工工事業者、工務店など古くからの取引先に対し、製材関連の卸売りを展開し、年間約1億円の売上高を計上していた。しかし、後継者不足から主要得意先である個人大工の廃業が相次ぎ、東日本大震災の復旧需要も収束する中で他社との競合も激化。近年は減収減益が続き1億円超に膨らんだ金融債務等返済の見通しが立たないことから2019年6月に事業を停止。自己破産を申請した。後継者不足から得意先を喪失丸栄木材株式会社/青森県八戸市CASE11992年に設立した水産物加工業者。東日本大震災により甚大な損害を受け一時休業。2012年4月に「中小企業グループ補助金」等の支援を受け本店工場・冷凍冷蔵倉庫を復旧し生産を再開。2015年2月には第二工場を約14億円の投資(補助金は約12億円)で完成させるも、建築費の高騰などから想定以上の投資となったうえ、販路喪失もあり売り上げは低迷。工場の稼働率低迷が続き財務内容は悪化した。販路開拓も奏功せず、先行きの見通しも立たなくなり、2019年10月に民事再生法の適用を申請した。販路喪失で新工場の稼働率低迷株式会社ヤマトミ/宮城県石巻市CASE21965年創業の餅製品製造・小売業者。主力商品の「凍天」は、全国ネットのテレビ番組で取り上げられるなど知名度を高めていたが、本店工場(福島県南相馬市)が福島第一原子力発電所の事故の影響で避難区域となり外注依存の製造となったうえ、風評から売り上げが落ち込み業績が悪化。2014年には宮城県名取市に新工場を設置し、宮城県内の商業施設などに出店をするも売り上げは低迷。工場設置に伴う借入金負担も収益を圧迫し、業績改善の見通しが立たないため、2019年4月に事業を停止。新規出店も売上減少止まらず株式会社木乃幡/宮城県名取市CASE3ヒト・モノ・お金の倒産事例ピックアップ※帝国データバンク 倒産・動向記事より抜粋27.5%40.6%31.9%お金ヒトモノ133

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