岩手・宮城・福島の産業復興事例集30 2019-2020 東日本大震災から9年~持続可能な未来のために
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76んは世の中にいっぱいいるんだろうなと考えていたとき、ちょうど株式会社船井総合研究所の家事代行サービスのセミナーを知り、受けることにしました」。セミナーでビジネスモデルを学んだ後、家事代行サービス「家事の応援隊KOMAME」をスタート。多忙を極める髙橋氏だけでは事業化は難しかったが、義理の妹に引き受けてもらうことになり、福島市でサービスを展開。楽器販売や音楽教室とは異なる事業だが、子育て応援という役割を自負するタカノ楽器にとてもマッチしているサービスだと実感している。「音楽や勉強を楽しんでもらいたい気持ちは変わりませんが、一番大事なのは子どもたちが笑顔になること。そういう意味では家事代行も子どもたちのためになると思っています」。その後、取引先の銀行から株式会社東日本大震災事業者再生支援機構(震災支援機構) のことを教えられた。2015年に債権の買い取りを受け、事業計画の作成も震災支援機構と進めた。「財務的に助けられたことはもちろん、事業計画立案や財務状況分析のノウハウも教えていただけて本当に勉強になりました」。2019年10月には関係各所の助力を得つつ、南相馬市内のショッピングセンターでヤマハ音楽教室を新たにオープン。大人向けの「ヤマハ青春ポップス」教室も始めた。近隣住民の余暇充実につなげたいと期待している。また、最近では学研教室の総生徒数が100人前後にまで増えた。若い母親世代を意識し、InstagramなどSNSでの情報発信にも積極的に取り組んでいる。「子育てを応援する企業として、地域の音楽文化の種まきと、学習環境を提供し続けていきたい」。子どもたちの笑顔を見るために――その思いは、事業を受け継ぐという大きな決断を経てさまざまな事業を展開する髙橋氏の、大きな原動力となっている。「ヤマハ青春ポップス」「歌って踊れる」をテーマにした大人向けの音楽教室。経験豊富な講師のサポートにより、楽譜無しで懐かしのヒット曲を歌うことができる。大人が手軽に音楽を楽しめる、と評判を集めている。19復興五輪新分野/新市場/海外進出観光振興/地域交流拡大事業承継被災地での再生・創業/被災地への進出1タカノ楽器本社店内。楽器や楽譜を販売するほか、楽器の修理工房も併設されている2ヤマハ音楽教室のレッスン風景 3音楽教室の発表会の様子4本社前で行った屋外演奏会の様子56下校時刻になると小学校低学年の生徒が次々に訪れ、自主的に学習を始めていた7「子育てを応援する企業でありたい」と話す髙橋氏8学研教室には、生徒に勉強を教える若いスタッフたちの姿も9「ヤマハ青春ポップス」のレッスン風景859地域の「学びと生活の復興」実現目指して取り組む覚悟生徒や保護者の言葉から、当社が学びと生活に関するかけがえのない地域インフラであることに気付き、事業継続の覚悟をお決めになりました。「学びや生活の復興」なくして産業復興の持続なし!成功のポイント地元密着企業の3事業が広げる「笑顔のつながり」子どもたちの笑顔創造企業として、音楽、学習支援、家事代行の3事業の柱が育っています。当社の生徒さんとその卒業生、そして保護者の方の「笑顔のつながり」が、地域の将来を支えるはずです。期待するポイント監修委員によるコメントと評価額田春華氏監修委員103

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