被災地の元気企業 40
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挑戦事例 ものづくり産業、大槌町 刺し子を通して 大槌の復興、 産業づくりに貢献する 「針と糸から、復興への糸口を。手仕事から、未来の働き口を」大槌復興刺し子プロジェクト(以下、「大槌刺し子」)は一針一針に復興への強い願いが込められた女性たちの挑戦である。震災直後、男性は現場の復旧作業等で忙しかったが、女性はこれまでの仕事だけでなく家事をする場すらなくなり、多くの女性は心の支えとなる仕事を必要としていた。そこで、針と糸があればでき、東北にゆかりのある技術、「刺し子」(手芸の一つの分野)で女性に仕事を提供しようと始まったのが大槌刺し子である。そして現在では50人の作り手が刺し子の制作に携わるまでに事業は拡大している。 大槌刺し子によって、女性たちは閉塞感から 解放され、仲間と語り合うことができ、自分の居場所を見つけることができた。もちろん貴重な収入源でもあり、やりがいも感じることができた。大槌刺し子の責任者である内野氏は想いを次のように語る。「この取組みを続けるうちに、作り手さんたちの中で、この仕事を自分たちの仕事として大槌に根付かせたいという気持ちが芽生えてきたように感じます。今は特定非営利活動法人テラ・ルネッサンスがこの事業を行なっていますが、この自主性の芽生えが復興への大きな一歩。震災で生まれたこの大槌刺し子が大槌の新たな産業となり、大槌といえば刺し子と言われるまでに育って欲しいと願っています」 取り組み(事業内容) 地元女性による手作りの味わい 大槌刺し子では大槌町の鳥であるカモメのデザインをモチーフにしたオリジナルTシャツやパーカー、コースターなどを制作、販売している。刺し子は作り手によって一針一針縫われており、手作りの温かさや昔ながらの素朴な味わいを活かして企業との共同開発を行ったり、大手企業のノベルティに採用されたりもしている。作り手は全て地元大槌の女性達。出来上がった刺し子を持ち寄る毎週火・水曜の刺し子会は地元の知り合いが集まるコミュニティとしての役割も担っている。 外部との連携で品質と技術力を向上 大槌町での刺し子制作は震災後に始まった取り組みである。東北でも日本三大刺し子と言われる津軽・南部・庄内が伝統的な刺し子として有名であるが、大槌町は刺し子の産業が無かったためデザインや製法の開発は一から行わなければならなかった。大槌刺し子の立ち上げメンバーの人脈を活かして多くの人の協力を得ながら商品開発を進めたが、「初めは試行錯誤の連続であり、商品としての完成度を高めること、品質を保持した効率的な生産を行うことに苦労した」と内野氏は話す。 そのため、プロのデザイナーに商品のデザインを依頼することや販路確保のために多くの企業と連携することで商品としての完成度が高まった。また、岐阜県の飛騨地域にある老舗メーカー「飛騨さしこ」には、刺し子に使う糸を注文するために送ったメールがきっかけで、作り手のための技術指導の講習会を開催してもらうこととなり、大槌刺し子の品質および技術力の向上につながっている。 刺し子で女性の働き口と産業の創造に挑戦 大槌復興刺し子プロジェクト プロジェクトマネージャー 内野 恵美 氏 特定非営利活動法人テラ・ルネッサンス ビジョン ● 女性の働き場の確保と新たな産業創出 大槌復興刺し子プロジェクトの挑戦 (写真右から3番目) 44
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