被災地の元気企業 40
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挑戦事例 水産加工・食品製造業、釜石市 水産加工業 釜石ヒカリフーズは、釜石をはじめ三陸で水揚げされたイカ、タコ、サケ、サバ、ウニ、アワビ等を原料として、寿司ネタなど企業向け商品の加工、販売を行っている。 主要な販売先は、大手居酒屋チェーン、有機・低農薬野菜・無添加食品を取り扱う宅配サービス大手、卸売商社等であり、他社からの引き合いも後を絶たない。これらの相手先は皆、佐藤氏の想いに共感した仲間の紹介から取引が始まったものである。さらに、主要商品の加工の際に発生する副産物を利用した商品開発にも積極的に取り組んでいる。 釜石の雇用の受け皿となる 釜石ヒカリフーズの従業員数は、2014年11月時点で23名であるが、2015年度末までに30名にすることが目標である。佐藤氏は事業発展のために必要となる、従業員の満足度を上げ、定着率を高めるためのポイントとして2点挙げている。 ①女性の活用:子供の運動会や、急な発熱、高齢者家族の通院等、急な休みで労働力が欠けた場合も、適時適切に人員配置を調整するなど、フレキシブルにお互いがフォローし合う仕組みをつくり、従業員に皆でカバーするという意識を醸成させている。 ②水産加工業の「きつい・汚い・危険」イメージからの脱却:個人別フレックスタイムを採用し、従業員が自由に働く時間帯を決めることができたり、作業場では有線放送で従業員の好みのBGMを流し、普段から整理整頓を心がけたり、従業員に対する社会保険等への加入も徹底したりするなど、楽しく・きれいで・安全な職場づくりを目指している。 地域が自信と尊厳を取り戻すため「働く場を作りたい」 もともと地方銀行の行員であった佐藤氏は、水産加工業に魅せられ37歳で転職し、釜石に移った。その後、2011年3月に震災が発生。家族を連れて出身地の盛岡に帰る事も考えたという。しかし、「自分だけ被災地を捨てて地元に帰っていいのか」という葛藤が自分の中で湧き上がった。そうした中、唐丹漁協や被災地の人々からの「水産加工の会社を立ち上げて欲しい」という声を受け、一念発起。2011年8月、地元ではない釜石の為に、資金も経営ノウハウも無い中で佐藤氏は釜石ヒカリフーズ㈱を創業した。 佐藤氏は「自社だけが良くなろうとして商売はしない。地域のものを売りたい、漁業者の売上を伸ばしたい」と語る。地域が潤い、地域の人が自分の住む場所に自信を持ち、子供たちが愛着を持ってこの地に根ざす。それが佐藤氏の目指す釜石の未来である。釜石の復興を願う佐藤氏の挑戦が始まったのである。 ビジョン 釜石ヒカリフーズ株式会社 代表取締役 佐藤 正一 氏 釜石ヒカリフーズの挑戦 取り組み(事業内容) ● 職場環境を整えることにより、被災者の方々や若者の雇用の受け皿になる ● 地域漁業者の収入の増加を図り、互いに発展していける良好な関係を構築する ● 水産資源確保のため、地域漁業者、水産加工業従事者の後継を育成する 独自の長期鮮度保持技術を活用し、水産業の6次産業化を目指す 40

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