被災地の元気企業 40
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課題克服のポイント 今後の課題と挑戦 ビジネスとして成長しなければならない 今後、リテラが克服すべき課題について渡邉氏は以下の3点をあげる。 1点目は、「事業の継続性を高めるためにもシェアを拡大し利益率を高める」ことである。この課題に対し渡邉氏は、これまでのBtoC商品ではなく、プロフェッショナル向けBtoB商品(美容室向けに高級ヘアケア商品)を開発することで利益率を高めたいと考えている。商品を作ってから市場に持ち込んでもシェアを獲得することは難しく、販促費がかかってしまう。 そのため、今後は東北に想いのある美容師/美容室などに商品開発段階から関与してもらい、顧客ニーズに沿った商品をマーケットインの視点で開発することで販促費を抑制しつつシェア獲得につなげる。 さらに将来的には陸前高田に自社工場を建設し、製造した製品を自社で販売することにより更なる利益率の上昇を目指している。 【名 称】 株式会社re:terra 【住 所】 岩手県陸前高田市米崎町字道の上69 【代表者】 代表取締役 渡邉 さやか 【連 絡】 TEL:03-5422-6296/FAX:03-6732-3300 【 H P 】 http://www.reterra.org/ 【 E-mail 】 info@reterra.org 2点目は、事業を成長させていくための「財 政基盤の確立」である。1点目の課題を達成するためにも渡邉氏の新しいビジネスモデルに共感する多様な資本をバランスよく巻き込むことで財務を強化し、自立した会社になる必要性を認識している。 そして最後に、今後も新商品を開発し続け、「地域の商品ブランドとして確立する」ことを大きな目標として掲げている。 現地に長く根付く事業になればいい 渡邉氏は、「将来的には陸前高田に椿農園を造成し、また工場を立てて、地元で一貫生産・販売できる体制を整えたい」と夢を語る。椿を育て収穫する人、それを加工して化粧品を製造する人、そして販売する人、すべての工程が気仙地区で出来るようになれば、地元に雇用が生まれ笑顔があふれると考えるからである。 その夢が実現したとき、「気仙椿」は地元の若者が誇れる地元の宝となっているであろう。 協力者との出会いでプロジェクトが動き出す 気仙椿油で化粧品の製造を目指していた渡邉氏と佐藤氏は、陸前高田市で唯一の製油所である「石川製油所」が震災を機に廃業を決めたことを知る。当時、障がい者授産施設「青松館」が石川製油所から製油技術を受け継ぐべく活動を開始したところであったため、佐藤氏はすぐに石川製油所と青松館に活動への協力を申し出るとともに、気仙椿ドリームプロジェクトへの椿油の提供を依頼した。当初は理解が得られず、二人の依頼は断られ続けた。しかし、佐藤氏は持ち前の行動力で「石川製油所」に通いつめ、「地域に根付いた事業を立ち上げたい」との想いを伝え続けた結果、半年後にようやくプロジェクトへの協力を取り付けることに成功した。 情熱と企画力で創業直後の資金不足を克服 渡邉氏は、気仙椿ドリームプロジェクトの第一弾として、ハンドクリームの企画をまとめていた。しかし、リテラには自社で商品を大量に製造販売するだけの資金力が無く、化粧品会社l に委託する必要があった。一方、メーカー側は提携するメリットが見出せず、数々の化粧品メーカーと交渉するも交渉はまとまらなかった。 そんな折、渡邉氏の知人である㈱ハリウッドビューティーサロンの社長を介してハリウッド化粧品と出会う。渡邉氏は自身のコンサルティング能力を活かし、ハンドクリームによる若年層への顧客拡大をハリウッド化粧品に提案。渡邉氏の情熱と顧客拡大の戦略に共感したハリウッド化粧品の社長は、商品を製造することを決断する。 また、資金力が乏しい中での販売にあたっては、在庫保有のための資金手当てが一つのポイントとなる。これについては、同様に渡邉氏の想いに共感した販売会社の㈱メイコーポレーションが資金負担を買って出てくれることとなった。それは、2012年11月21日の商品発表会直前のことであった。 En女医会の監修で商品の 価値とPR効果を高める En女医会は女性医師による ボランティア活動団体である。 渡邉氏の活動に共感し商品開発段階からプロジェクトに参加し、女性の視点と医師の知識でアドバイスをしてくれた。さらに商品発表会では、前面に立って商品の良さをアピールしてくれ、気仙椿ハンドクリームのプロモーション面で大きな役割を果たしてくれた。 震災後、渡邉氏が東北で海外へ発信する題材探しをしている時、渡邉氏の挑戦を推進するうえで欠かせない人物に巡り合う。後に気仙椿ドリームプロジェクトのプロジェクトリーダーとなる佐藤武氏である。 39
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