被災地での55の挑戦 ―企業による復興事業事例集―
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“地域ぐるみでのブランド化” 競合他社との差別化には自社単独でのブランド化が効果的であるが、震災という非常時への対応という観点から、むしろ地域そのものをブランド化することで販路を拡大しようという取組が広がっているのも特徴である。 女川をカレーのまちにしようと地元関係機関を巻き込んだアナン、サメを食文化に高めようと協議会を立ち上げたムラタなどがその例である。 '3( 新たな販路開拓 “川上や川下への進出” 特に水産加工業者の中で、震災前の一次・二次加工に踏みとどまらず、積極的に川上や川下の工程に参入することで販路を開拓しようと試みる例が多い。 水産加工の卸売から自社グループのホテルとの連携を図った阿部長商店、居酒屋チェーンで鮮魚提供にこだわり魚の買い付けに参入したエムケーコーポレーションなどがその例である。 “他企業との共同化の取組” 川上や川下への参入といった手法は、企業体力や資金的な制約などから単独で実現するのは容易ではない。こうした制約を他社と共同して取組むことで解決しようとする事例も多くみられた。 大型船の共同受注を目指す互洋大船渡マリーナ、タコの加工ノウハウを同業者間で開示しあい品質を保持した相馬双葉漁協などがその例である。これらの事例は、震災をきっかけにライバル関係を乗り越えて協力しあっている点でも注目される取組である。 “海外販売への挑戦” 国内市場が成熟している場合であっても、海外では新鮮な価値を提供できる商品やサービスも尐なくない。こうした点に着目して冷静に市場を分析したうえで、海外に販路を見出そうとしている例も幾つかみられた。 日本酒の良さを海外にも広めようと挑戦している末廣酒造、ロシア向けに加工魚の輸出を狙う武蔵野フーズなどがその例である。 '4( BtoCへの転換 受注生産を主力としてきた企業にとって、直接消費者を相手にビジネスを行うには、大きな意識の変革に迫られる。それまでの意識を変えるだけでなく、消費者と直接コンタクトする際に必要な顧客管理のシステム化やコールセンター業務のマニュアル化など、業務の質の転換を図らなければならない。こうした“業態転換に必要な体制強化”に取り組んだのが小野食品や髙政などである。 しかしながら、こうした業態転換を単独で一気呵成に成し遂げるのは容易ではない。そこで、“段階的なBtoCへの転換”を試みる巧みな戦略をとっている事例もいくつかみられた。展示会への出展を手始めに展示販売で実績をつみ最終的に店舗販売までこぎ着けた向山製作所、大手流通業者とのBtoB取引の拡大を足掛りにネット販売強化を狙うナカショクなどがその例である。 '5( 個社・尐数共同単位から地域の業界再編へ これまで個社や限られた同業者とのあいだで取り組んでいた新商品開発や販路開拓の動きが、地域における業界内での役割分担を積極的に進めることによって“サプライチェーンの構築”へとつなげようとする動きもみられ

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