被災地での55の挑戦 ―企業による復興事業事例集―
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50 康食品になる。 '3(チャレンジ'挑戦( 当社は、潜在的に大きな可能性を持つにもかかわらず、震災被害と急激な事業環境の変化による需要低迷等、大変厳しい状況にある気仙沼のサメ関連業に対して強い危機感を抱いていた。そこで、平成25年2月に復興庁宮城復興局と気仙沼商工会議所が共催した第2回地域復興マッチング「結の場」をきっかけに、取引先であるフカヒレ加工業の中華高橋が中心となり、地元関連業者に呼びかけて、平成25年7月に「サメの街気仙沼構想推進協議会」を設立した(http://samazing.jp/kesennuma.html)。 メンバーは、市内のサメ関連事業者8社をはじめ、気仙沼市、漁協、商工会議所、気仙沼地区近海鰹鮪漁業組合も参加し、生産者、加工者、行政が一体となって取り組んでいる。また、域外企業としてNTTドコモ、ヤフー等6社からも事業支援を得ている。協議会は、サメ肉を高付加価値化しマーケットの拡大を図ることで気仙沼のサメ漁業の維持・存続、6次産業化、気仙沼に人を呼ぶ手段として活用し、サメに注目したまちの活性化、観光客呼び込みを目指している。実施する事業は、“サメ肉の普及”と“マーケットの創造”の2つである。気仙沼はサメの水揚げは盛んだが「サメ食文化」がないため、地元住民のサメ食推進、活用勉強会、イベント等を企画することでサメ肉普及に取り組んでいる。震災前からサメ加工は中華高橋が力を入れており、地元の中華高橋水産でサメ肉をつかった唐揚げのシャークナゲットをつくり、地元の学校給食に納めていた。これを起点に、まずは地元の理解を得ることで、サメ肉の地位をあげたいと考えている。マーケット創造の取り組みとしては、サメ加工業者のプロの視点でサメに関するレシピを開発し、気仙沼市内の飲食店でサメを提供してもらっている。また、秋保温泉旅館組合と連携し、低カロリー、高タンパク、ヘルシー食材として売り込み、秋保温泉のヘルスツーリズム事業に協力している。ここでは、旅館の料理長にサメを利用したメニューを検討してもらっている。 協議会立ち上げには苦労もあった。もともと、すり身加工業者は普段はライバル同士で、震災前は特に創業した一代目が集まる場がなかった。しかし、震災後の復旧・復興過程では、様々な問題に直面し、1社対応では限界があることを悟った。これをきっかけに、まずは、30代と若手の二代目を中心に、お互いの悩みを解決していくために集まるようになった。協議会形式の最大のメリットは、大手企業の支援を受けやすいことである。地元の単独企業に対する支援では、大手企業も動きにくいが、協議会として地域単位でまとまれば、大手企業がCSRとして支援しやすくなる。協議会を立ち上げた結果、震災がなければ、接点が持てなかったNTTドコモ、ヤフー等大手企業と関係をもつことができた。この関係を活かして今後もサメの生産地から情報発信し、賛同者をつのり、気仙沼の復興の一助となりたいと考えている。また、将来的には、単なるCSR上での関係にとどまらず、大手企業のビジネスにもメリットのある具体的なビジネスの関係につなげていきたいと考えている。 '4(エッセンス'大切なこと( 新たなサメ食メニューの開発 当社の取り組みは、①震災後の危機感をベースにした地域事業者の連携、②外部から支援を受けやすい協議会設立による情報発信と対応、に特徴がある。当社は震災後の危機感をベースにして今まで困難だった同業者の集まりを可能とし、協議会に発展させることを通じて大手企業等外部からの支援を受けやすい体制を整備し、地域企業、関係者の連携による気仙沼のサメ関連産業活性化の取り組みを行っている点が特筆される。

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