被災地での55の挑戦 ―企業による復興事業事例集―
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47 1.当社の強み'商品開発力(を活かせる市場にターゲットを絞る 2.効果的な提供体制を外部リソースの活用により構築する 小野食品株式会社 1988年設立、従業員数76人'2013年11月末現在( 事例の概要 '1(プロフィール'概要( 釜石市の小野食品㈱は、釜石の水産加工業界を代表する会社である。当社は、学校給食、外食産業・産業給食、病院・施設給食、一般消費者(通販卸・直販)を主なターゲット市場とし、冷凍食品焼魚・煮魚、レトルト食品の製造・販売を手掛けてきた。震災前から消費者直販の世界に踏み込んでいたが、ホテル、外食、学校給食といった業務用の売上が70%と圧倒的に高く、通販の部分(通販卸含む)は20%程度であった。しかし、震災後、当社の事業構成は大きく変化。従来の業務用ユーザーの比率は20%程度に低下し、新たな業務用ユーザーが20%程度加わった。具体的にはホテル等の外食が中国製の低価格商品に代わり大きく減尐する一方、航空機の機内食、宅配等が新たに追加された。そして、従来全体の10%程度であった消費者直販事業を60%まで急激に拡大させている。 '2(バックグランド'背景( 津波の被害を受けた水産加工業者の多くは、震災前の既存顧客を失った。当社も例外ではなかった。主力の第一工場と通販ビジネス用に竣工させたばかりの大槌事務所は全損、第二工場も半壊した。その後、第二工場を改装し、100日後に新工場として稼働を開始。かなり早い事業再開であったが、業務用の販路は既に別の業者に占められ、顧客の多くが取引を元に戻してくれないという厳しい状況であった。 当社の小野昭男社長は、大幅な売上の減尐と社員数の半減という経営環境に直面する中、今までの事業を一から見直し、事業の絞り込みを実施していく。「創業以来作り上げてきた業務用市場は既に震災前から低価格競争の荒波に晒され競争力を失いつつあった」。絞り込みの基準は、当社の強みを活かせる市場。そこで、「価格ありきではなく、品質、美味しさを優先してもらえるお客様」を基本とし、重点分野として震災前から手掛けてきた消費者直販事業の拡大を目指したのである。直販事業は、震災前からテスト販売を通じて、「“旪の美味しさ”を温め販売・流通体制の再構築業務向け商品の低価格競争生協の共同購入事業により直販事業のきっかけを得る経営管理の仕組みの再構築宣伝広告の強化外部専門家の活用大槌事務所の着工課題課題への対応顧客管理システムの再構築商品コンセプトの明確化テスト販売の実施宣伝広告の実施ピッキング業務のアウトソーシング直販向け商品開発選択と集中販売・流通体制の構築業務標準化による人材育成商品コンセプトの再定義既存取引の減尐高品質な商品作りの体制の構築暗黙知の共有等展望本格実施準備構想・計画3.11事例1-13 被災をバネに「B to B」から「B to C」へ~小野食品の挑戦~ 岩手県釜石市 新工場での作業風景

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