被災地での55の挑戦 ―企業による復興事業事例集―
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21 事例3-13 民芸品にイノベーションを導入し、高付加価値化を実現! 福島県西会津町 1.民芸品の製作にプロセスイノベーションを導入し、工程を合理化 2.民芸品にデザインイノベーションを加味し、高付加価値化 3.作品の高付加価値化により情報発信力を高め、新たな顧客を開拓 野沢民芸品製作企業組合 1962年創立、従業員数20人'2013年3月末現在( 事例の概要 '1(プロフィール'概要( 西会津町の野沢民芸品製作協同組合は、400年以上の歴史を持つ民芸品「会津張り子」の製作を手掛ける協同組合である。自身も職人である当組合の伊藤豊理事長は、観光地ではない当地において自店舗を構え製作・販売を行う職人の業態に限界を感じた。これら職人を纏めて製作に特化することで当地に民芸品産業を興すことを目的に、1962年、中小企業等協同組合法に基づく協同組合を設立した。 '2(バックグランド'背景( 設立当初、当組合はこけしを主に製作していたが、1967年頃を境に張り子製作に切り替えた。貼り子を手掛けた理由は、こけしは木の削り出しから絵付けまで職人1人がかかりきりとなるが、張り子の場合は、絵付けは職人の技量が必要であるものの、ベースとなる紙型は習熟を必要とせず、パート等一般的な労働力でも容易に作業可能だったためである。貼り子製作は福島県内で最後発であったため、当組合は他社との差別化を図るべく工程の合理化に取り組んだ。張り子の元となる紙型は、一つの木型に紙を何枚も張りつけて作るのが伝統的方法だが、大量生産が難しい。伊藤理事長はかつて携わった箪笥製作の経験を元に、紙型を一度に複数製造する装置を考案した。具体的には、細かく砕いた紙の溶液に8つの木型を纏めたブロックを浸し、紙を吸着させた後に水分を抜いて乾燥させるというものである。この方法により、伝統的な方法で1つ作るのにかかる時間で100個作ることができ、さらに木型の組み合わせを変えることにより、異なる紙型の張り子を同時に作ることが可能となった。伊藤理事長は、「工程の合理化によって、同業他社より安いコストで作れるようになった。他社にはできないことを我々は40年以上前に成し遂げた」と振り返る。 設立以降、当組合は土産物や企業の販促品・記念品等の需要に向けて、昔ながらの民芸品を手掛けていた。しかしながら、国内旅行動向や企業業績に左右されるこうした需要に対応しているだけでは、当組合の将来展望が描きにくくなってきた。そこで、伊藤社長は、民芸品の新たな需要の掘り起こしと同業他社との差別化を目的に、製作工程の合理化課題課題への対応復興支援活動を行うアーティスト等とのコラボ高付加価値品新たな顧客獲得デザイン性の向上「起き上がりムンク」過去の経験を活かし装置開発若い才能の発掘高付加価値品により情報発信早川氏をメインデザイナーに起用「叫び」をモチーフにデザインメディア取り上げにより認知向上メディア取り上げにより認知向上人材育成展望本格実施準備構想・計画3.11

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