被災地での55の挑戦 ―企業による復興事業事例集―
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122 た、当社のシャフト炉式ガス化溶融炉は、通常の焼却炉と異なり、廃棄物を高温で溶かすもので、震災がれきの処理に適したシステムであった。具体的には、①ごみの分別が必要なく、処理できる廃棄物の対象が広い、②廃棄物処理後出てくるものは、再利用できるスラグとメタルが中心で最終処分が必要な飛灰が尐なく減容化できる、という点である。このことから、当社は、清掃工場施工・運営を通じた釜石市との強固なネットワークをベースとして、旧清掃工場と新清掃工場で震災がれきを処理するスキームを提案した(下図参照)。釜石市との協議を重ね、施設調査を実施した結果、旧清掃工場の再稼働が可能であることがわかった。そこで、当社提案スキームで釜石市の震災がれき処理が実施されることとなり、2011年9月末に釜石市と「釜石市災害廃棄物溶融処理業務委託契約」を締結した。同契約では2012年2月までに必要な施設整備を行い、2014年3月末まで約6万トンの災害廃棄物溶融処理を完了することとしている。旧清掃工場の再稼働にあたっては、メンテナンスや焼却炉運転に熟練した技術者が必要であったが、当社子会社が旧清掃工場の運転を担っていたことから、スムーズな対応が可能であった。当該スキームの採用により、焼却炉を新設する場合と比較し、費用の大幅な削減が可能となり、災害廃棄物処理を早期に開始することができた。また、シャフト炉式ガス化溶融炉の特性により廃棄物を減容化でき、最終処分量を極小化できた。 当社は、上記の取り組みの他、東北各地で各種復旧工事、耐震補強工事を実施している。また、復興需要による建設労務不足、資材不足の中、短工期で建築できるシステム建築「スタンパッケージ」の普及に努めており、「釜石医療センター」施工等の事例がある。また、当社は、復興に機動的に対応できるよう震災復興プロジェクト部を設置し、社内で情報を共有する体制をとっているが、今後も、地域でのビジネス基盤と自社ノウハウを活かした復興への取り組みを行っていきたいとのことである。 '4(エッセンス'大切なこと( 釜石市の災害廃棄物処理全体スキーム概要 当社の取り組みは、①釜石製鉄所をベースにした古くからのビジネス基盤の存在、②震災復興に利用できる技術の存在と、積極的な地域への提案、③焼却炉運営を通じて築いた自治体とのネットワークを活かした調整と計画実施に特徴がある。大手企業は、震災復興に活用できる技術・ノウハウを豊富に持つものの、復興に活かすことが難しい中、当社の取り組みは、古くからの地域でのネットワークを活かし、震災復旧・復興プロジェクトに自社技術を活かしている点が注目されるものである。

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