復興の教訓・ノウハウ集

復興の教訓・ノウハウ集

災害からの復旧・復興過程で生じる課題に対し、東日本大震災における状況とこれに応じた官民の取組事例、専門的知見も踏まえた教訓・ノウハウを記載しています。(令和3年3月公表)

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被災した子どもの心身のケア

事例名 あしなが育英会東北レインボーハウス(現:仙台、石巻、陸前高田レインボーハウス)
場所 宮城県(仙台市・石巻市)、岩手県(陸前高田市)
取組時期 応急期復旧期復興前期復興後期
取組主体 一般財団法人あしなが育英会

取組概要

 阪神・淡路大震災時に設立された「神戸レインボーハウス」や全国の病気・自死遺児らを対象として2016年に設立された「あしながレインボーハウス(東京都)」での経験を活かし、2014年に東日本大震災津波遺児や孤児のための交流施設として「東北レインボーハウス」(仙台・石巻・陸前高田)が設立され、子どもたちが悲しみや様々な感情(グリーフ)を表出するため工夫された様々な部屋が設置されており、同世代の同じような体験をした子どもたちが自分の気持ちや経験を語り合えるよう、日帰りのワンデイプログラム、つどい(お泊まり会)などのプログラムが設けられている。

具体的内容

震災遺児のサポート拠点

 阪神・淡路大震災の遺児たちが集った95年夏つどいで小学生の男の子が描いた「黒い虹」を見て、遺児たちの心の中の「黒い虹」が七色の虹に変わるようにとの願いから、1999年に、震災遺児の心のケアの家「神戸レインボーハウス」が完成した。
 この経験を踏まえ、東日本大震災時に、あしなが育英会は、遺児2,083人に特別一時金を給付し、特別一時金の受給者が多かった宮城県仙台市・石巻市、岩手県陸前高田市の3か所に、震災遺児や孤児のための交流施設「レインボーハウス」を2014年に設立した。いずれも被災地に近く、遺児が集まりやすい立地に開設されている。子どもたちが悲しみを出すために工夫された様々な部屋が設置されており、また、同世代の子どもたちが自分の気持ちや経験を語り合えるよう、日帰りのワンデイプログラム、つどい(お泊まり会)などのプログラムが設けられている。

*東北レインボーハウスとは仙台、石巻、陸前高田レインボーハウスの総称

仙台レインボーハウス
 仙台市中心の立地にあり、東北のセンターのような機能を持っている。定期開催の「ワンデイプログラム」(NPO法人子どもグリーフサポートステーションと合同)には、県内外から様々な遺児家庭の方が参加している。そのほか、全地域を対象に「中高生のつどい」や大学生・社会人のプログラムも実施している。

石巻レインボーハウス
 ワンデイプログラムと金曜開館日を定期的に開催している。石巻市は市町村別で最も震災津波遺児の数が多く、未就学児から大学生まで幅広い年齢の子どもたちが利用している。

陸前高田レインボーハウス
 主に岩手県陸前高田市、大船渡市、住田町、一関市、宮城県気仙沼市の家庭を対象に、毎月定期的なプログラムを実施している。
 また、3か所のレインボーハウスは、活動がない日には、地域の子育て支援団体等を中心に施設の貸し出しを行っている。

「レインボーハウス」のグリーフサポート施設

 それぞれのレインボーハウスは、神戸レインボーハウスのノウハウを活かし、子どもたちのグリーフ(深い悲しみ、愛惜)の表出を手助けする三つの部屋を設置している。大きなソファに座りながら、ゆっくりと話ができる「おしゃべりの部屋」、人を傷つけることなく体を動かすことでストレスを発散することのできる「火山の部屋」、頭や手を使って遊びに没頭できる「あそびの部屋」がある。ほかにも、体育館のような多目的ホールや食堂、宿泊部屋などを備え、震災遺児たちが楽しく過ごせる環境を整えている。特に、子どもたちが遊び回ることができる多目的ホールは、震災当時避難所となった体育館と異なる印象にするため、曲線の屋根にするなどの配慮がなされている。

「レインボーハウス」のグリーフサポート施設

おしゃべりの部屋

「レインボーハウス」のグリーフサポート施設

火山の部屋

「レインボーハウス」のグリーフサポート施設

あそびの部屋

「レインボーハウス」のグリーフサポート施設

多目的ホール

ファシリテーターの役割

 震災遺児たちの心のケアを目的としたプログラムには、「ファシリテーター」と呼ばれる、子どもの心に寄り添うボランティアスタッフの存在が欠かせない。子どもたちのグリーフの理解のほか、コミュニケーションスキルの練習や自身のグリーフを振り返るグリーフワーク、セルフケアについてなどの養成講座(2日間)を受講した人のみが、ファシリテーターとしてプログラムに参加できる。震災遺児の中には、大学生や成人となりファシリテーターとして活躍している人もいる。今後もプログラム開催の要ともなるボランティアであることから地域に広く呼びかけ継続的な養成講座開催をめざす。

<出典>(他の事例集等への掲載)
・あしなが育英会「東北レインボーハウス」
https://www.ashinaga.org/activity/emotional-care/rainbow-house-sendai/
https://www.ashinaga.org/activity/emotional-care/rainbow-house-ishinomaki/
https://www.ashinaga.org/activity/emotional-care/rainbow-house-rikuzentakata/

・ソフトバンクニュース「震災遺児・孤児を見守り続ける『仙台レインボーハウス』~東北の子どもたちに今、私たちができること~」
https://www.softbank.jp/sbnews/entry/20200304_01?page=02#page-02

・震災遺児の心に寄り添う:「一番つらいのはこれから」
https://www.nippon.com/ja/in-depth/a04303/

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