復興の教訓・ノウハウ集

復興の教訓・ノウハウ集

災害からの復旧・復興過程で生じる課題に対し、東日本大震災における状況とこれに応じた官民の取組事例、専門的知見も踏まえた教訓・ノウハウを記載しています。(令和3年3月公表)

13-1)

自力再建者への支援

事例名 個人債務者の私的整理に関するガイドライン
場所 -
取組時期 応急期復旧期復興前期復興後期
取組主体 一般社団法人東日本大震災・自然災害被災者債務整理ガイドライン運営機関

取組概要

 東日本大震災の被災者が二重債務によって生活再建に支障を来さないよう、2011年7月「個人債務者の私的整理に関するガイドライン」が策定され、債務者と債権者の合意に基づく私的な債務整理によって債務免除を行うことが可能となった。
 その後、このガイドラインは、災害救助法の適用を受けた自然災害に広く対応する新たなガイドライン「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」の策定につながり、2021年4月から両ガイドラインが「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」に一本化されることとなった。

具体的内容

「個人債務者の私的整理に関するガイドライン」の策定

 東日本大震災の影響によって、住宅ローンを借りている個人や事業資金を借りている個人事業主等が既往債務の負担を抱えたままでは、生活再建が困難になるため、2011年7月、金融機関団体の関係者や学識経験者らから成る「個人債務者の私的整理に関するガイドライン研究会」が発足した。研究会では、金融機関等の債権者が住宅ローン等の既往債務を弁済できなくなった個人債務者に対して、破産手続等の法的倒産手続を進めるのではなく、債権者と債務者の合意に基づいた債務の猶予・減免などの債務整理を公正・迅速に進めるための指針となるガイドラインを策定した。

ガイドラインの意義

 このガイドラインは、個人債務者の私的整理に関する金融機関関係団体の自主的自律的な準則として策定したものであり、法的拘束力はないものの、債権者、債務者、その他の利害関係人によって尊重され自発的に遵守されることが期待されている。ガイドラインに基づく私的な債務整理により被災者の既存債務の負担が軽減されることは、被災者の自助努力による生活や事業の再建を支援し、被災地の復興・再活性化にも資するものである。

第三者機関による個人債務者に対する支援

 ガイドラインによる債務整理を利害関係のない中立かつ公正な立場から、的確かつ円滑に実施する第三者機関として、2011年8月、「一般社団法人個人版私的整理ガイドライン運営委員会」が設立された(2019年4月に「一般社団法人自然災害被災者債務整理ガイドライン運営機関」と合併し、「一般社団法人東日本大震災・自然災害被災者債務整理ガイドライン運営機関」に改称)。

第三者機関による個人債務者に対する支援

図:東日本大震災・自然災害被災者債務整理ガイドライン運営機関について (※当初の状況)

 一般社団法人東日本大震災・自然災害被災者債務整理ガイドライン運営機関では、①債務者がガイドラインを利用して債務整理を行う旨の債権者への申出、②弁護士や不動産鑑定士など専門家の登録と債務者への支援依頼、③弁済計画案の作成支援及びチェック、④債権者への弁済計画案の伝達を行い、被災者の生活再建に向けた支援を進めている。2011年8月から2020年9月末までの相談は5,976件、債務整理成立件数は1,372件である。

「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」の策定

 その後、「個人債務者の私的整理に関するガイドライン」に係る対応を通じて得られた経験等を踏まえ、広く自然災害に起因する二重債務問題に対応するため、2015年9月「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン研究会」が発足した。研究会では、金融機関等の債権者が、災害救助法の適用を受けた自然災害の影響によって、住宅ローン等の既往債務を弁済できなくなった個人債務者に対して、破産手続等の法的倒産手続を進めるのではなく、債権者と債務者の合意に基づいた債務の猶予・減免などの債務整理を公正・迅速に進めるための指針となる「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」を策定し、2016年4月1日から適用開始とされた。
 2021年4月1日からは、東日本大震災の被災者についてもこのガイドラインの適用対象とし、被災者の債務整理に関するガイドラインの一本化を図ることとなった。また、2020年10月30日には新型コロナウイルス感染症にガイドラインを適用する場合の特則を制定し、12月1日から新型コロナウイルス感染症の影響を受けた個人債務者の債務整理にも適用している。

<出典>(他の事例集等への掲載)
・一般社団法人東日本大震災・自然災害被災者債務整理ガイドライン運営機関
http://www.dgl.or.jp/guideline/

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