復興の教訓・ノウハウ集

復興の教訓・ノウハウ集

災害からの復旧・復興過程で生じる課題に対し、東日本大震災における状況とこれに応じた官民の取組事例、専門的知見も踏まえた教訓・ノウハウを記載しています。(令和3年3月公表)

12-2)

恒久住宅移行後の支援

事例名 地域の未来を考える「陸前高田市保健医療福祉未来図会議」の設置と「はまってけらいん、かだってけらいん運動(はまかだ運動)」の推進
場所 岩手県陸前高田市
取組時期 応急期復旧期復興前期復興後期
取組主体 陸前高田市、住民及び支援団体等

取組概要

 岩手県陸前高田市では、地域全体の健康意識を高め、住民交流を促進することで、住民全体の心身の健康状態を維持・向上を図ることを目的として「はまってけらいん、かだってけらいん運動(通称「はまかだ運動」)」を実施している。「はまかだ運動」の住民への浸透の促進として、市内に点在する市民の居場所や支援団体等の活動場所等に着目、「はまかだスポット」として登録し、地域ごとにとりまとめた「はまかだスポットガイド」をWEB版と紙版により広報した。
 様々な活動に住民が自主的に参加する形をとることで、「はまかだ運動」は拡大・継続している。

具体的内容

陸前高田市保健医療福祉未来図会議の設置

 岩手県陸前高田市では、2012年12月から全国からの応援チームを含めた保健医療福祉関係者が、市の保健医療福祉の現状と課題を共有し、復興に向けた直近の対策から未来像を探る議論を重ねてきた。その後、同会議は「陸前高田市保健医療福祉未来図会議」(以下、「未来図会議」という。)と名称を変え、住民の生活に関するあらゆるテーマについて、住民誰もが参加でき、議論することができる場となった。
 議論の中で、個々の住民への健康支援は健康調査を活用して進んでいたが、陸前高田市では、全市民が震災により何らかの影響を受けていると考えられ、健康を維持しながら生活再建を進めるためには、地域全体を対象とする普及啓発と住民参加の運動が必要だと認識された。そこで、「みんなが集まって話すことで自然に心がほぐれていく」ことを地域全体で実践する「はまってけらいん、かだってけらいん運動(通称「はまかだ運動」)」が提案された。はまかだ運動は、NPOや保健推進員など住民や支援関係団体を巻き込みながら徐々に浸透し、市の保健事業の基盤となった。さらに、はまかだ運動に当初から賛同していた県保健所では、この取組の効果を認識し、自殺予防対策の取り組みとして位置づけ、気仙地区全体に運動を拡げていった。

はまってけらいん、かだってけらいん運動(はまかだ運動)の推進

 NPOや住民団体が実施している様々な活動が「はまかだスポット」として登録され、住民は、健康相談やお茶会の他、育児相談、体操、農作業、カラオケ、太鼓等、様々な活動に気軽に立ち寄り、参加することができる。
 例えば、「おちゃっこサロン」(スポットNo.126)では、地区のコミュニティーセンターで毎月第4月曜日にお茶会・血圧測定・健康相談が開催される。また、「草月流松田社中」(スポットNo.148)では、毎月第2・4木曜日に代表者宅でいけ花に取り組むことができる。対象者や参加費もスポットごとに設定されている。
 市では、NPOや保健推進員等の住民と協働し、「はまかだ運動」を未来図会議の活動や他の保健事業と連動させたり、普及啓発グッズを作成したりするなど「はまかだ運動」の普及・拡大に取り組んでいる。また、行政担当者と住民の顔の見える関係づくりの機会とするため、はまかだスポットの調査を行ったり、運営に悩んでいる活動を把握した場合は、活用できそうな助成金や担当部署へつなぐなど、活動の継続を支援している。

はまってけらいん、かだってけらいん運動(はまかだ運動)の推進

図 はまかだスポットガイド(出典:陸前高田市ウェブサイト)

 陸前高田市では、こうした運動を通して、「ノーマライゼーション(誰もがあたりまえのように過ごせる環境をつくること)という言葉のいらないまちづくり」を目指している。

<出典>(他の事例集等への掲載)
・陸前高田市「はまってけらいん かだってけらいん運動」
・公益財団法人ひょうご震災記念21世紀研究機構(2018)「東日本大震災から7年 事例に学ぶ生活復興-災後・災前にすぐに役立つ<生活復興>読本-」p14-15.
https://www.reconstruction.go.jp/topics/m18/04/20180409160607.html

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