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恒久住宅への移行に伴うコミュニティの形成
事例名 | 災害公営住宅におけるコミュニティ形成支援~県営栃ヶ沢アパート~ |
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場所 | 岩手県陸前高田市 |
取組時期 | 応急期復旧期復興前期復興後期 |
取組主体 | 岩手県、岩手大学三陸復興・地域創生推進機構、陸前高田市社会福祉協議会、NPO陸前高田まちづくり協働センター、NPOいわて連携復興センター ほか |
取組概要
災害公営住宅のコミュニティの形成を支援するため、大学と地方公共団体等が連携し、住民主体の自治会設立を支援した。自治会設立に当たっては、リーダーシップのあるキーパーソンを手助けするという手法ではなく、住民の主体性を引き出す支援へと変えたことで、住民総参加型の自治会の運営を実現した。
具体的内容
岩手大学三陸復興・地域創生推進機構によるコミュニティ支援
岩手大学三陸復興・地域創生推進機構では、災害公営住宅の自治会設立支援を始めた当初、住民の中から活動経験や意欲のあるキーパーソンを見つけ、その人の支援を中心に行っていた。しかし、その方法ではキーパーソンに負担が集中し疲弊してしまうため、全住民が自治会設立・活動に関わる「住民総参加型」の支援へと方針を転換した。
コミュニティ支援では、「住民の主体性を育て、自立したコミュニティを形成すること」を目標とし、その重要な役割を担う組織として自治会を位置づけ、自治会の設立・運営のサポートが積極的に行われた。支援の展開にあたっては、地域に関する情報収集と多様な機関の連携による支援体制を構築した後、顔合わせ会や準備委員会の開催、課題共有と組織案の提示、自治会設立を経て活動実践という流れをとった(図)。また、自立したコミュニティ形成のため、公営住宅や自治会の仕組みを解説するなどの情報提供や主体性の醸成のほか、住民の経験やノウハウの蓄積を図るために、議事録や報告書の作成をサポートするなど、実践力の強化を重視した。

図:コミュニティ形成支援の流れ(船戸,2019)
県営栃ヶ沢アパートにおける自治会設立支援
県営栃ヶ沢アパート(以下、栃ヶ沢)の支援では、入居者の快適な生活を実現していくために必要な支援を協議・調整することを目的に、岩手県が事務局となり、陸前高田市を含む関係団体が連携し、「県営栃ヶ沢アパートミーティング(以下、ミーティング)」として2016年4月から支援体制を整備した。
ミーティングは、2016年7月に入居予定者向けの交流会や説明会を開催した。また共益費の集金・支払いを担う管理人の選出にあたっては、従来は行政機関が入居前に選任していたが、住民の主体的な関与を引き出しにくくすることから、関係団体向けに「自治会役員・管理人組織図(案)」や「管理人に関する課題と対応策・管理人選出方法(案)」を岩手大学から提示し、対応策を協議した。その結果、栃ヶ沢では自治会役員が管理人を兼任し、入居後に全居住者の話し合いによって選ぶことを決定した。
またミーティングは、8月1日の入居開始後の9月末に顔合わせ会を実施。同会の参加世帯数は全世帯数200世帯のうち174世帯(87%)を占めた。会では「4コマ自己紹介」を通じて住民相互のコミュニケーションを促したほか、行政職員(もしくは管理者)による共益費や自治会の必要性の説明等が行われた。
同時に、自治会設立に向けた自治会設立準備委員を選出し、同委員会を約5ヶ月間で8回実施して、役職・組織案や自治会規約案の提示、役員候補選出方法の協議、事業計画・予算案の協議等、様々なサポートを展開し、住民主体の自治会設立へとつなげた(写真)。
自治会設立後も、支援者は毎月ある自治会役員会に参加し、アドバイスを提供するだけでなく、住民対象の情報共有会を開催して自治会運営や生活に関する意見・課題等の交換会も設けるなど、持続的な自治会運営を後方支援している。

写真:自治会設立準備委員会の様子(船戸,2019)
・船戸義和「被災地の地域コミュニティ支援~岩手県の災害公営住宅における自治会設立支援の進め方」特定非営利法人いわて連携復興センター・岩手大学三陸復興・地域創生推進機構(2019年8月)
https://www.ifc.jp/news/notice/entry-2585.html
・公益財団法人ひょうご震災記念21世紀研究機構「東日本大震災から7年 事例に学ぶ生活復興-災後・最前にすぐに役立つ<生活復興>読本」(2018年3月)p78-81
http://www.reconstruction.go.jp/topics/m18/04/20180410_seikatsufukko.pdf
・心の復興事業(岩手大学三陸復興・地域創生推進機構)