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要配慮者の情報把握と保健医療サービス提供体制
事例名 | 在宅障害者に対する戸別訪問支援 |
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場所 | 福島県南相馬市 |
取組時期 | 応急期復旧期復興前期復興後期 |
取組主体 | 南相馬市、JDF(日本障害フォーラム)被災地障害者支援センターふくしま、NPO 法人さぽーとセンターぴあ 他 |
取組概要
福島県南相馬市では、自宅での避難生活を余儀なくされた障害者の安否確認と支援のため、市と障害者団体が障害者手帳の名簿情報を共有して個別訪問を行った。
緊急時に即した個人情報保護条例の柔軟な取り扱いにより、行政機関と民間団体が災害時要配慮者の個人情報を共有することが実現し、行政機関と民間支援団体の協働により、自宅避難した全ての高齢者や障害者等の個別訪問・応急対応を完了した。
具体的内容
発災前の状況
南相馬市の「災害時要援護者名簿」は、高齢者・障害者(要介護度3以上、身体障害者手帳1~2級、療育手帳A、65歳以上のひとり暮らし高齢者と高齢者のみ世帯)の中から同意の得られた住民を対象に作成されており、民生委員、区長、消防団等に要援護者の個別支援計画が配布されていた。
また、南相馬市では、毎年防災訓練が実施されていたが、避難計画策定や訓練に際して障害者団体への呼びかけは行っておらず、障害者団体との連携はなかった。
発災時の障害者の安否確認と支援
福島第一原子力発電所の事故に伴い、「緊急時避難準備区域(自主的避難を推奨し、特に入院者、要介護者、妊婦、子供は引き続き避難が求められる地域)」に指定された地区では、地区全員が避難対象となったが、避難行動や避難先での生活に困難を抱える高齢者や障害者は自宅での避難生活を余儀なくされた。
2011 年4月上旬、南相馬市は自衛隊の協力のもと、震災前に作成していた「災害時要援護者名簿」によって残された住民の安否確認を開始したが、「災害時要援護者名簿」は「手上げ方式」で作成されていたため、実際に南相馬市に残っていた障害者らはほとんどリストアップされていなかった。そのため、市の福祉部局にある「障害者手帳」の名簿情報だけが障害者の所在を把握する手がかりとなった。
NPO 法人さぽーとセンターぴあ、JDF(日本障害フォーラム)被災地障害者支援センターふくしまから、市に対して障害者手帳の個人情報の開示要望があったが、障害者手帳の個人情報を市以外の機関に提供することは南相馬市個人情報保護条例に抵触すると考えられた。しかし、同条例の「個人の生命、身体又は財産の安全を守るため、緊急かつやむを得ないと認められるとき。」という規定を適用し、支援団体へ個人情報を提供した。
最終的に、障害福祉サービス利用者に対してはそれぞれの事業所で安否確認を行い、サービスを利用していない障害者のうち、身体障害者・知的障害者590名の安否確認が支援団体への情報開示により実現した。南相馬市は、地方公共団体として災害時要援護者に関する個人情報を民間団体に提供し、安否確認等を行った唯一の事例となっている。
・内閣府「障害者への災害時支援と個人情報」平成24年版障害者白書(2012年6月)p47-50
https://www8.cao.go.jp/shougai/whitepaper/h24hakusho/zenbun/index.html
・日本障害フォーラム「東日本大震災を経験して、国に対する提案・要望」(2012年2月)
・岡本正「個人情報の共有で地域をつなぐ-改正災害対策基本法の全面施行と活用術」SYNODOS(2014年4月)
https://synodos.jp/fukkou/7719