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農林業の販路の開拓
事例名 | 県外企業と連携した営農再開の取組 |
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場所 | 福島県楢葉町 |
取組時期 | 応急期復旧期復興前期復興後期 |
取組主体 | 主体:農地所有適格法人株式会社福島しろはとファーム 農地所有適格法人株式会社しろはとファーム 協力:福島県楢葉町、白ハト食品工業株式会社 他 |
取組概要
福島県楢葉町は、復興の一環として、基幹作業である農業の再生を掲げており、新たな農業の創出が課題となっていた。こうしたなか、さつまいもの6次産業化に取り組む白ハト食品工業株式会社の子会社・株式会社しろはとファーム(現株式会社福島しろはとファーム)からさつまいも栽培の申し出を受け、2017年の実証栽培から本格的な事業の推進を支援している。
さらに2020年9月には大型の甘藷貯蔵施設を整備し同社に貸与、作付面積50ha、約1500tの生産を目指して企業と連携してさつまいもの一大産地づくりに取り組んでいる。
具体的内容
住民の帰還促進のための新たな農業の創出
白ハト食品工業株式会社を中心とする白ハトグループは、さつまいもの生産から製造加工、スイートポテトや焼き芋などさつまいも商品の販売までを一貫して取り扱ういわゆる6次産業化に取り組んでいる。その子会社である農地所有適格法人株式会社しろはとファームは、宮崎県・茨城県に自社農場をもち、さつまいもの栽培を行っている。さらに事業展開を図っていく中で、さつまいもの安定的な供給に向けた「大規模・安定生産」を喫緊の課題として掲げ、さつまいもの安定的な供給ルートの確保を目指していた。
一方、福島県楢葉町は、2015年9月に避難指示解除準備区域より解除され、復興を加速化させるために新たな農業の創出が必要であること、また復興のために町の原風景を取り戻すという強い思いがあったため、農業を柱とする産業の立て直しに迫られていた。
そのような状況のもと、白ハト食品工業株式会社から楢葉町に対し、「畑や仮置き場になっていた土地をさつまいも栽培に活用したい」との申し出があり、楢葉町もそれに応え、農地の確保について協力することにした。
楢葉町でのさつまいも栽培の開始
株式会社しろはとファームは、2017年に楢葉町の栽培適性や収益性を検討するため、町内の生産者3戸に協力を依頼し、栽培面積1.3haでさつまいもの実証栽培を実施した。その際、楢葉町が農家に意向調査を実施し、「さつまいも栽培に関心を持つ」と回答した農家と白ハト食品工業株式会社の仲介役となって栽培地の確保を進めた。
町内の農家は、同社の指導を受けながら、町のいきいきアグリ復興基金で苗代や肥料代の助成を受け、実証栽培に取り組んだ。この実証栽培を通じて、同町でのさつまいも栽培の見通しが立ったことから、2018年1月、同社は福島県に株式会社しろはとファーム福島支店を設立し、楢葉町の協力を得て生産者12戸から11haの農地を借り、栽培管理に必要な機械は福島県営農再開支援事業を活用してリース方式で調達し、自社での本格的な栽培をスタートさせた。加えて、同社の技術支援を受けた現地の農家が生産したさつまいもについても、全量買い取りを行った。
生産・出荷体制の充実による大規模営農モデルの確立
2019年4月、白ハト食品工業株式会社は、株式会社しろはとファーム福島支店を発展的に解消し、楢葉町に農地所有適格法人株式会社福島しろはとファームを設立、また同年10月には東京電力ホールディングス株式会社も出資し、さつまいも栽培の拡大に取り組み、苗植えや収穫などに協力している。その結果2020年10月には、さつまいもの栽培面積を試験栽培当初約30倍の40haにまで拡大させることができた。
楢葉町も2020年9月に、福島再生加速化交付金を活用して、国内最大規模の甘藷貯蔵施設を新たに整備し、株式会社福島しろはとファームに貸与している。この施設には、高温多湿下で貯蔵期間を延ばす処理を行う「キュアリング室」や最大1260tを保管できる貯蔵庫などが設置されており、さつまいもの通年出荷が可能となった。同社では、新たな大規模営農モデルの確立を目指し、今後も楢葉町でのさつまいも生産を通じて、栽培環境のさらなる充実に取り組んでいく。
今後の展開
震災前の楢葉町の畑地75haまで回復できることを目標に、2020年には、株式会社福島しろはとファームはさつまいもの作付面積を50haまでに拡大し、約1,500トンの生産を目指している。今後、より大区画の農地を長期にわたって借り受け、作付面積を拡大する計画である。
さらに、楢葉町では、さつまいも栽培を広く浸透させるために、農家が参加する甘藷部会が設けられ、2021年度より新たに約30戸の農家がさつまいもを育て、同社に買い取ってもらうという動きがみられるなど、楢葉町と企業との連携により、さつまいもの一大産地づくりが進められている。こうした取組に対して、同県の郡山市や南相馬市、田村市などでもさつまいも栽培を開始。更なる希望が高まっている。
・復興庁福島復興局HP営農再開情報「大規模さつまいも栽培で地域雇用の創出を」(2018年10月)
https://www.reconstruction.go.jp/portal/chiiki/hukkoukyoku/fukusima/material/201810.naraha.pdf
・日本経済新聞「白ハト食品、福島にイモ農場 地元雇用で復興後押し」(2018年3月13日)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO28043310T10C18A3AM1000/
・日本経済新聞「福島 サツマイモ大農場」(2018年3月13日)
・毎日新聞「福島・楢葉町大規模サツマイモ栽培スタート」(2018年5月29日)
https://mainichi.jp/articles/20180529/k00/00e/040/199000c
・農林水産省「東日本大震災からの農林水産業の復興支援のための取組」(2020年2月)p62
https://www.maff.go.jp/j/kanbo/joho/saigai/torikumi.html
・いわき経済新聞「福島県楢葉町に日本最大規模のサツマイモ倉庫完成 1200トン超貯蔵可」(2020年10月)
・復興庁HP HandinHandレポート「楢葉町の美味しい“季節の実り”を体感!」(2020年12月)
https://www.fukko-pr.reconstruction.go.jp/2018/fukushimanoima/reports/report-19/
・毎日新聞「福島の旧避難指示区域 農業は今…県外企業誘致、イノベーションが描く未来図と課題」(2021年1月)
https://mainichi.jp/articles/20210119/k00/00m/040/094000c
・福島県楢葉町「いきいきアグリ復興基金」
・福島県営農再開支援事業
・福島再生加速化交付金