復興の教訓・ノウハウ集

復興の教訓・ノウハウ集

災害からの復旧・復興過程で生じる課題に対し、東日本大震災における状況とこれに応じた官民の取組事例、専門的知見も踏まえた教訓・ノウハウを記載しています。(令和3年3月公表)

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商店街・商業施設等の復旧・復興

事例名 南三陸さんさん商店街の復興
場所 宮城県南三陸町
取組時期 応急期復旧期復興前期復興後期
取組主体 南三陸さんさん商店街

取組概要

 南三陸商店街は津波で壊滅的な被害を受けたが、2012年2月には仮設商店街を整備、多様な店舗構成で復興のシンボルとして多数の観光客が訪れた。
  2017年3月、嵩上げ造成された土地に交流施設・駐車場とあわせて、新たな商業施設を整備し、地域ならではの海産物を活用したグルメの提供や物販を行うことで商店街の本格的な復興を実現した。

具体的内容

仮設商店街の整備

 南三陸町の人口は震災前年は人口約1万7千人、高齢化率(65歳以上の高齢者の人口に占める比率)は30%に達している。漁業と観光を生業とする町であり、津波によって平地の建物の大部分が流出、複数あった商店街も壊滅的な被害を受けた。
 店舗も商品もない中、地元商業者が自ら立ち上がり、全国の商店街と連携した「防災朝市ネットワーク」の支援を受けて、震災からわずか49日で「福興市」を開催した。多くの客から励ましの声を聞き、早期の再開を決意した。
 2012年2月に志津川地区で35区画、鉄骨1階建て、延床面積1,583㎡の仮設商店街「南三陸さんさん商店街」を開業した。商店街では季節の旬を生かした南三陸キラキラ丼を提供する飲食店や地元の新鮮な海の幸を揃えた物販店など多様な店舗で構成され、地元民だけでなく復興のシンボルとして多くの観光客が訪れた。こうした取組により、2014年に経済産業省の「がんばる商店街30選」に選出された。

まちなか再生計画の認定

 2015年に町は震災前のにぎわいの拠点であった志津川地区で嵩上げした新市街地約12haに交流施設、駐車場とあわせて、新たな商業施設を整備し、南三陸さんさん商店街を移転し商店街の本格的な復興を図ることにした。6月、施設の整備・運営主体として㈱南三陸まちづくり未来を設立、10月に国からまちなか再生計画の認定を受けた。同社では、津波立地補助金を活用して木造平屋建ての店舗棟6棟、延床面積3,086㎡の施設の整備を行った。
 住まいの高台移転とあわせて住宅地とを結ぶバス路線の検討を行った。

南三陸さんさん商店街の復興

 2017年3月、小売店、飲食店など28店舗からなる南三陸さんさん商店街がオープンした。商業施設の区画は区分所有ではなく、まちづくり会社が一括して所有し、テナントに貸し出す方式をとる。賃料は相場より低い水準で設定している。このほか、共有エリアの管理・運営等による収入を得ており、収益性を確保している。
 開業から3年半で「南三陸さんさん商店街」に観光客を中心に200万人以上が来場した。

地域の魅力を打ち出した集客

 施設は建築家隈研吾氏の監修のもとで設計され、南三陸“美人杉”で建てられている。まちづくり会社はスケルトン(骨格)で建設し、内装はテナントが整備する。

若手人材の育成・働きやすい職場環境の整備

写真:「美人杉」を使用して設計された商店街施設
(出典:南三陸さんさん商店街 ホームページ)

 仮設商店街から引き続き、飲食店では四季に応じた南三陸産の新鮮な海産物が贅沢にのせられたブランドグルメ「キラキラ丼」を提供し好評を博している。
 南三陸の新鮮な海産物と多数の土産物が販売され、地域外からの誘客を目指している。

若手人材の育成・働きやすい職場環境の整備

写真:商店街名物「キラキラうに丼」
(出典:南三陸さんさん商店街 ホームページ)

地域観光団体との綿密な連携

 町が南三陸さんさん商店街の隣接地に、1960年のチリ地震をきっかけに友好関係を結んだ南三陸町とチリとの友好のシンボルであるモアイ像を設置しているほか、町観光協会が観光案内所の設置や地域を案内する町歩き語り部というプログラムを実施するなど町や関係団体と密接な協力を行っている。
 また、南三陸町では、当町観光協会が主催となって様々な催し物を開催している。例えば、漁師たちがインストラクターとなって漁船の上で釣りが体験できる南三陸ブルーツーリズムでの「手ぶらでフィッシング」や漁業体験、「南三陸ふっこう青年会」主催のビーチフラッグ大会や夏祭りといった街おこしのイベントが催されており、さんさん商店街はこれらの取組と連携して集客を進めている。南三陸さんさん商店街のHPでは、観光協会での催し物や南三陸町の観光名所の紹介を積極的に行っており、町ぐるみで観光客誘致に取り組んでいる。
「街づくりへの積極的な関与と取組み」を通じて、地域の中心的な役割を担い、地域を牽引する商業エリアとして認められ、2019年5月に日本SC大賞 特別賞(一般社団法人日本ショッピングセンター協会)を受賞した。

<出典>(他の事例集等への掲載)
・中小企業基盤整備機構「仮設設備整備事業例 宮城県【南三陸さんさん商店街】」
・がんばる商店街30選(経済産業省、2014年)
https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/sapoin/monozukuri300sha/zenbun/2014ganbaru.pdf

・復興庁「南三陸町まちなか再生計画の認定について」(2015年10月)
https://www.reconstruction.go.jp/topics/main-cat1/sub-cat1-15/20151001124953.html

・新・公民連携最前線「「南三陸町まちなか再生計画」が始動、新商店街が着工」(2016年7月)
https://project.nikkeibp.co.jp/atclppp/15/433782/070800407/
<活用された制度>
・津波・原子力災害被災地域雇用創出企業立地補助金
<事業費>
・7億円(うち国費5億円)

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