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産業人材の確保
事例名 | 地元人材の雇用 岩手モリヤ株式会社 |
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場所 | 岩手県久慈市 |
取組時期 | 応急期復旧期復興前期復興後期 |
取組主体 | 岩手モリヤ株式会社 |
取組概要
岩手県久慈市にある岩手モリヤ株式会社は、主に高級ブランドの婦人服等を製造する企業であり、東日本大震災では生産が一時停止したため売り上げが大幅に減少した。このため、作業工場の集約化や工場の徹底的な省エネ化によるコスト削減とあわせて、効率的な生産ラインの確立やタブレット端末を活用した工程管理などITを活用した生産性の向上も進めている。
同社は、人口減少、若者の他地域への流出が続くなか、地元人材の積極的な雇用に努めている。従来から主力となる女性社員に長く勤めてもらえるよう、社長自らが育児休業制度の充実や会社独自の子育て支援、婦人子供服製造技能士取得支援などに積極的に取り組み、働きやすい職場環境を整備している。また、地元高校生の雇用と育成に力を入れており、都心の百貨店での市場調査など働く意欲の向上に努めている。
具体的内容
震災を契機とした経営課題の顕在化
岩手県久慈市にある岩手モリヤ株式会社は、主に高級ブランドのジャケットやコート、婦人服の製造を扱う企業である。東日本大震災発生当時、従業員は全員無事、設備機器等も特に大きな被害はなかったが、停電により製造ラインがストップしたことに加え、震災後の高級品の買い控えの影響により受注が激減し会社売り上げが大幅に減少した。
また、アパレル産業の海外生産が進み、国内で生き残るためには更なる技術力向上とともにコスト競争力の強化が必要となっていた。
コスト削減と生産性の向上
同社は、生地試験から裁断・縫製・出荷までを内製化した一貫生産と高い縫製技術が強みであり、それを可能にする多数の大型設備を持っていた。まず、電力の削減のため、消費電力の少ない機器への更新、作業工場の2棟から1棟に集約、照明のLED化など徹底した省エネを行うなどコストを削減した。コスト削減分は賞与として従業員に還元し、モチベーションの向上に努めた。
また、生産性向上のために、新設備の導入やIT化・IoT化を積極的に進めている。例えば、整理整頓や「カイゼン活動」、見える化といった社内活動に加えて、縫製作業・工程管理にタブレット端末を活用するなど、従業員個人の経験やテクニックに依存しない形での労働環境を整えるように社内改革に熱心に取り組んでいる。
若手人材の育成・働きやすい職場環境の整備
同社は「縫製業は労働集約型の産業であり、技術を持った人に長期間にわたって働いてもらえないと事業が成り立たない」と考え、工場の主力となる女性の雇用継続のための環境整備を進めた。具体的には育児休業制度の整備や企業独自の子育て支援制度の導入といった雇用条件の整備、婦人子供服製造技能士取得のための作業場の確保、実技・学科試験のための生地・テキスト貸し出しなどを積極的に支援している。また、岩手県の「いわて女性活躍企業」の認定も受けており、現在では全役職者の7割以上が女性役職者となっており女性社員全体のモチベーションも上がっている。
震災前からの人口減少や若者の都会への流出による働き手不足が大きな経営課題となり、同社は地元の高校生の雇用と育成に力を入れている。若手人材の育成の一環として、商品が販売されている都心の百貨店やセレクトショップなどへの訪問等を企画するなどして、自社の技術力の高さを実感させ、労働意欲を高める機会を積極的に設けている。

テレビカメラ搭載最新鋭柄裁断CAM(左)

コンピューター内蔵袖付き専用ミシン(右)
(出典:岩手モリヤホームページ)
今後のビジョン
震災直後から地元からの積極雇用や、女性の雇用継続のための環境づくりに一貫して取り組んできた。2016年時点で、すべての社員が地元から採用され、また100人の従業員のうち約9割が女性など、雇用環境整備の成果が見え始めている。
今後は、雇用環境の整備・改善に加え、新設備の導入や徹底したコスト削減などを継続して行い、「人の勘や経験・テクニックに依存しない生産工程」を目指している。
・復興庁「私たちが創る 産業復興創造 東北の経営者たち」(2016年2月)
https://www.reconstruction.go.jp/topics/main-cat4/sub-cat4-1/20160210094116.html
・JUKI「わが社のモノ作り戦略第22回 岩手モリヤ代表取締役社長 森奥信孝氏」
https://www.juki.co.jp/industrial_ j/craftsmanship/case_study/detail.php?id=36
・復興庁「地域における人材確保ノウハウブック」(2018年3月)
https://www.reconstruction.go.jp/topics/main-cat4/sub-cat4-1/20180312171637.html