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企業立地の促進
事例名 | 地域の立地環境を生かした企業誘致 有限会社バイオケム |
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場所 | 岩手県陸前高田市 |
取組時期 | 応急期復旧期復興前期復興後期 |
取組主体 | 有限会社バイオケム、陸前高田市 |
取組概要
有限会社バイオケム(埼玉県坂戸市)は、サケの白子から抽出した医薬品原薬や化粧品、健康食品の原料などを製造する企業である。魚の未利用部位および低利用部位を有効活用した高付加価値化の製品開発をめざしている。2020年5月から、水産資源が豊富な三陸海岸沿岸部の陸前高田市に津波立地補助金を活用して新工場の建設を進めており、2021年6月から操業を開始する予定である。
建設地は、防災集団移転促進事業により市が買い取った移転元地であり、付近には水産加工団地があり、水産資源を活用した製品開発を進める同社にとって最適な立地環境である。
具体的内容
未利用水産物資源から医薬品原料等の抽出・精製
有限会社バイオケムは、1994年に埼玉県坂戸市に設立され、サケの白子から医薬品原薬や化粧品、健康食品の原料となる未利用の資源を抽出・精製している。従業員十数名という小規模企業であるが、創業前から、天然物から未利用物質である有効成分を抽出・精製する技術開発に取り組み、独自の創意工夫や技術ノウハウを備えたビジネスモデルを構築し、世界の大手製薬メーカーとも取引するまでに成長している。
2020年1月時点で埼玉県内に2ヶ所(川越市、ときがわ町)、岩手県釜石市の1ヶ所に工場を構え、生産に取り組んでいる。2017年7月「津波・原子力被災地域雇用創出企業立地補助金」の採択を受け、陸前高田市気仙町に新工場を建設することを決定し、各種調整のうえ2020年1月同補助金の交付決定を受けたことにより、2020年2月に市と企業立地に関する協定を締結した。5月から着工し、2021年6月からの稼働開始をめざしている。
陸前高田市での立地経緯
新工場の建設地は、陸前高田市が防災集団移転促進事業で買い取った移転元地である。陸前高田市では街の再活性化を目指して被災した沿岸部の土地や造成した中心市街地を利活用し、企業立地や市街地の魅力向上に取り組んでおり、その一環として移転元地を新たな産業の集積地としてまちづくり・地域活性化に活用する取組を進めていた。市では、移転元地での企業立地を促進するため、企業に対して積極的な営業活動や土地建物に関する情報発信・PRなどの広報活動や、地元企業に対し、取引先で市内に立地可能性がある企業の情報提供を求めるなど官民一体となって企業誘致に取り組んでいた。
一方、バイオケム社は、水産物を活用した医薬品原薬や健康食品の原料生産を拡大するためには水産資源が豊富な三陸沿岸部への進出を検討していた。陸前高田市の建設候補地は、近くに水産加工団地が立地している水産加工会社との連携が可能なこと、また、老朽化が進む釜石工場と川越工場の製造品目を減らし、主たる生産拠点を陸前高田新工場とすることで、生産の効率化と増産体制を図るという経営戦略から、経済産業省「津波・原子力被災地域雇用創出企業立地補助金」を活用して、同市への工場立地を決断した。
地元水産加工業との連携と地域の雇用創出
新工場は市長部漁港西側の移転元地に建設される予定で、広さ920㎡の工場と木造平屋の事務所を整備する予定。新工場の従業員については、現時点では川越、釜石の両工場の従業員及び地元雇用により8人を配置する予定で、今後、業況に応じて地元住民の雇用を増やす予定だという。
今後、原料供給業者となる水産加工会社と連携し、サケの白子以外の未利用資源の活用も考えており、また、将来的には品質管理部門の設置も検討している。大学などで化学系を専攻し、陸前高田市で働きたいという地元へのUターンを目指す若者の雇用の受け皿にもなることを目指している。

写真:バイオケム 陸前高田新工場
(写真提供 有限会社バイオケム)
・有限会社バイオケム ホームページ
http://www.biochem-jp.com
・Web東海新報「長部地区に工場整備へ 健康食品の原料製造 陸前高田」(2020年2月28日)
https://tohkaishimpo.com/2020/02/28/282580/
・陸前高田市「第6回土地利活用促進会議 これまでの取組状況について」(2020年12月)
・防災集団移転促進事業(移転元地の活用)
・津波・原子力災害被災地域雇用創出企業立地補助金(食料品製造業)
・企業立地奨励事業(岩手県陸前高田市)