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資金供給の支援
事例名 | 気仙沼信用金庫・地域密着型金融の推進 |
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場所 | 宮城県気仙沼市 |
取組時期 | 応急期復旧期復興前期復興後期 |
取組主体 | 信金中央金庫 |
取組概要
気仙沼信用金庫は、宮城県気仙沼市を中心に三陸沿岸部を主な事業区域とする信用金庫であり、震災で12店舗中10店舗の閉鎖を余儀なくされ、融資先の事業者も被災したことによって、今後の財務の状況を見通すことが困難であったことから、2012年2月、金融機能強化法の協同組織金融機関向け特例により、国及び信金中央金庫から150億円の資本投入を受けた。
2012年に策定した特定震災特例経営強化計画(2016年更新)に基づき、信用金庫の強みである日々の営業活動を通じて、資金繰りや経営改善、事業再生、生活再建など個々の事業者の経営課題に即した地域密着型の金融を推進し、地域の復興・再生、地域経済の活性化に貢献している。
具体的内容
地域経済を支える金融機能の維持・安定確保
気仙沼信用金庫は、東日本大震災で壊滅的な被害を受けた宮城県気仙沼市を中心に南三陸町、陸前高田市、大船渡市を主な事業区域とする信用金庫であり、震災で12店舗中10店舗の閉鎖を余儀なくされた。震災後3日目から被災を免れた店舗で、キャッシュカードや通帳を持たない顧客に信用金庫の職員の名前さえ言えば10万円まで現金を払い出し、当面の資金繰りに応え安心感を与えた。
同金庫では与信先の14%を占める980先、総与信額の47%を占める210億円が震災の被害を受けたが、発災直後から被災地の金融機関として被災事業者向けの新規融資(2020年5月累計3,597先、651億92百万円)を実行したほか、貸付条件の変更(同422先、73億56百万円)や約定弁済の一時停止など柔軟な対応を行い、地域経済を支える金融機能の維持、安定確保に貢献している。
金融機能強化法震災特例による資本参加
気仙沼信用金庫自身の被災や融資先事業者の被災によって、今後の財務の状況を見通すことが困難であったことから、2012年2月、金融機能強化法の協同組織金融機関向け特例に基づき、国・信金中央金庫から150億円の資本参加を受けた。これまで2期(2011年4月~2016年3月、2016年4月~2021年3月)にわたって5か年の特定震災特例経営強化計画を策定し、信金中央金庫の指導を受けながら、被災債権の管理・回収をはじめ、地域における円滑な金融を推進している。
企業の経営改善・事業再生支援
地域の事業者の経営改善を支援するため、定期的な営業活動を通じた経営実態の把握、継続的な指導、助言を行っているほか、経営改善計画の策定を支援している。
被災事業者の二重債務問題については、宮城産業復興機構、岩手産業復興機構、東日本大震災事業者再生支援機構による事業者の既存債権買取を支援するなど事業の再生に取り組んでいる。2020年6月末現在、これらの機関の活用実績は56件である。
住宅ローンを抱える顧客には、「個人債務者の私的整理に関するガイドライン」の個別訪問による説明、相談会の開催などにより同ガイドラインの周知や同ガイドラインに基づく債務整理を進めている。2020年6月時点で41名から債務整理の開始の申出があり、うち26名の弁済計画について同意している。
創業・販路開拓支援
2011年11月、国際NGO、米国企業からの基金拠出により「三陸復興トモダチ基金」を創設し、NPOプラネットファイナンスジャパンと連携して新規創業への助成、被災企業の再雇用への助成、利子補給を行った(基金は2014年度で終了)。
全国の信用金庫と連携して顧客に「ビジネスマッチ東北」などのマッチングイベントへの出展を支援し、取引の拡大を支援している。
2013年12月、公益財団法人三菱商事復興支援財団と公益財団法人日本財団の支援により、一般財団法人気仙沼しんきん復興支援基金を創設し、気仙沼信用金庫の融資に対する利子補給に加え、商品の企画・開発、販路開拓を支援する販路開拓戦略塾の開催やソーシャルビジネスへの支援を実施している。
2016年7月には、東京東信用金庫と提携して、震災からの復興に取り組む気仙沼地域の漁業者や水産加工業者と都内の飲食店・食品関連事業とのマッチングにより、販路拡大をめざす「地産都消プロジェクト」を展開している。2017年10月には両地域の若手経営者の異業種交流会を開催した。
地域の復興・再生、地域経済の活性化
2016年9月に創立90周年を迎え、2017年2月新本店を竣工、2020年9月現在、被災した10店舗中6店舗が通常営業、3店舗が他店舗内・仮設店舗営業、1店舗が他店舗と統合となっている。なお、他店舗内・仮設店舗営業の3店舗については、2020年度に2店舗、2021年度に1店舗を再建予定である。
今後、信用金庫の強みであるフェイス・トゥ・フェイスによる営業を通じて、顧客の経営課題を把握し相談・助言を行うコンサルティング機能を強化し、被災企業の経営支援から地域の復興・再生、地域経済の活性化に取り組んでいく。
・気仙沼信用金庫「経営強化計画の履行状況報告書の公表について」(2020年9月)
・金融機能の強化のための特別措置に関する法律(震災特例)