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復興ツーリズムの推進
事例名 | 震災遺構「たろう観光ホテル」と「学ぶ防災ガイド」 |
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場所 | 岩手県宮古市 |
取組時期 | 応急期復旧期復興前期復興後期 |
取組主体 | 宮古市 一般社団法人宮古観光文化交流協会 |
取組概要
岩手県宮古市では、津波被害を受けた「たろう観光ホテル」を市が買い取り、被災した当時の姿のまま津波遺構として保存し、管理している。宮古観光文化交流協会では、この「たろう観光ホテル」の館内見学等を含む「学ぶ防災ガイド」を実施しており、利用者に津波の脅威や命の大切さを伝えている。
具体的内容
たろう観光ホテルの保存
宮古市のたろう観光ホテルは、1986年に建設された6階建て30室の観光ホテルである。2011年3月11日の東日本大震災に伴う津波で4階まで浸水し、2階までは柱を残して流失したものの、倒壊することなく留まった。
津波被害を受けた建物の取り壊しが進む中、宮古市では、たろう観光ホテルを津波遺構として保存することを決定し、2014年3月に同建物を取得した。
宮古市は訪れる人々に津波の恐ろしさを伝え、津波による被害を繰り返さないことを願い、被災した「ありのままの姿を残すこと」を決め、復興交付金を活用して保存整備工事を行った。市では津波遺構「たろう観光ホテル」を長期保存するため、「ふるさと寄附金(ふるさと納税)」を募り維持管理費等を賄っており、寄付金の一部が津波遺構保存基金として積み立てられている。2020年度は、津波遺構の保存に約2,492千円が充当されている。

津波遺構「たろう観光ホテル」
学ぶ防災ガイド
宮古市の外郭団体である宮古観光文化交流協会では、2012年から「学ぶ防災ガイド」と銘打って震災ガイドツアーが行われている。
この震災ガイドでは、自然災害の恐ろしさと早期避難の大切さを実感してもらうため、防潮堤の上で当日の状況の説明を聞き、実際に使用された避難道を歩く体験のほか、津波遺構「たろう観光ホテル」と連携し、ホテル館内の見学や同ホテル6階から撮影した当日の津波映像(メディア未公開)の上映等を行っている。特に、たろう観光ホテルから撮った映像は、津波が防潮堤を越えてからホテルに到達するまでの速さを実感することができる貴重な資料となっている。
ガイド時間は30分から1時間コース(4千円)、90分から2時間コース(1万円)に区分されており、利用者の要望に応じて時間を調整するなど、利便性にも配慮されている。
「学ぶ防災ガイド」の利用者は2016年5月時点で述べ10万人を達成した。語り部によるガイドツアーを民間だけで維持していくのが難しい中、観光協会がツアーを担うことで伝承活動の継続が図られている。
・宮古市「津波遺構たろう観光ホテルについて」(2020年9月)
・宮古市「学ぶ防災ガイド」(2020年7月)
・宮古市「「学ぶ防災」利用者10万人記念セレモニー」
・宮古市「寄付金の活用状況について」(2020年6月)
・宮古市観光文化交流協会ホームページ
https://www.kankou385.jp/bousai/
・東日本大震災復興交付金
・237,504千円(うち国費190,003千円)