52-１）

新たな観光需要の創出

取組概要

　震災で大きな打撃を受けた東北地方の観光産業は観光客を取り戻すため、海外のインバウンド客、なかでも欧米の富裕層をターゲットとした新たな観光プログラムを創り出す仕組みづくりを進めた。
　このため、株式会社ダイヤモンド・ビッグ社が中心となって、東北の自然や文化遺産、工芸品など「日本文化」を前面に打ち出した観光資源を造成・販売するための仕組みとして、「東北プレミアムサポーターズクラブ」を設立し、旅行会社・ハイヤー会社・旅館・DMOなど観光産業に携わる企業をチーム化して東北観光商品が売れる仕組みを構築している。

具体的内容

被災地における観光資源

　震災によって大きな被害を受けた観光産業を立て直すために、インバウンドによる訪日外国人の集客を目指して交流人口を増加させることが重要である。しかし、東北地方は自然や文化遺産、工芸品など富裕層向けの観光コンテンツを多くもつにもかかわらず、欧米富裕層向けの観光商品の開発や海外市場へのアピールが不足していたため、日本に関心を持つ富裕層をターゲットにした誘客が実現できていなかった。
　日本に関心を持つ欧米圏やシンガポールの富裕層など、海外から多くの観光客に訪れてもらうためには、富裕層を顧客に持つ旅行会社のニーズを把握したうえで新たな観光プログラムを創設し、海外市場を通じて世界中に発信することが重要となる。

東北プレミアムサポーターズクラブの設立

　東北の観光資源を世界に発信するための取組として、株式会社ダイヤモンド・ビッグ社が中心となり、富裕層を顧客に持つ旅行会社、ホテル・旅館、バス、タクシー会社、地域DMOを会員として、高品質な旅行パッケージを造成・販売するための仕組みとして「東北プレミアムサポーターズクラブ」を設立した。サポーターズクラブでは、主に会員サイトを通じた観光商品に関するニュースレターの発行や、クラブメンバーとの商談会の実施など、情報提供を中心に取り組んでいる。

訪日外国人の観光誘客

　旅行商品造成に向けて、プレミアムサポーターズクラブの会員が東北視察を行い、東北地方にある観光資源やモデルプランが旅行者のニーズに合致するのか意見交換を行い、メンバーが互いに持つ商材を確認しあうなど、新たな観光プランの作成に向けてメンバー間の交流を深めている。
　訪日外国人の観光誘客を受け入れ体制を強化するために、「通訳案内士スキルアップ研修」として外国人スーパーガイドを講師として招聘し研修を実施。日本や東北地方に関心を持つ富裕層向けのガイドを育成する試みも展開されている。
　東北プレミアムサポーターズクラブの会員企業が提供しているサービスや旅行商品を海外の旅行会社やメディアに対してプロモーションするなど、海外メディアを通じた東北旅行商品のアピールを展開している。さらに、アメリカ在住のフードライターを招聘して、東北の「食」をテーマにした取材を実施し、東北の魅力を発信する記事の形成につなげている。

これまでの成果と今後に向けた課題

　2018年度の東北プレミアムサポーターズクラブでの年間の成果目標は送客数70人以上、延べ宿泊者数200人泊であったが、実績は送客数174人（シンガポール45人、米国45人、イスラエル22人など）、延べ宿泊者数は1,194人泊であり、目標値を大きく上回った。
　2019年度についても、成果目標は送客数70人以上、延べ宿泊日数150人泊のところ、実績は送客数104人、延べ宿泊日数491人泊であり、目標を上回った。
　今後は富裕層向けの環境整備（ヘリポート等のインフラ強化、体験コンテンツの充実、東北に詳しい富裕層向けのガイド育成）に向けた自治体への働きかけを行い、プロモーションの強化を予定している。