復興の教訓・ノウハウ集

復興の教訓・ノウハウ集

災害からの復旧・復興過程で生じる課題に対し、東日本大震災における状況とこれに応じた官民の取組事例、専門的知見も踏まえた教訓・ノウハウを記載しています。(令和3年3月公表)

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農林業の高度化・先進化

事例名 異業種企業の連携による新たなビジネスモデルの創出
場所 宮城県仙台市・亘理町
取組時期 応急期復旧期復興前期復興後期
取組主体 主体:舞台アグリイノベーション株式会社
 (株式会社舞台ファーム、アイリスオーヤマ株式会社)
協力:宮城県亘理町

取組概要

 農業生産法人の株式会社舞台ファームと製造業のアイリスオーヤマ株式会社との異業種企業の連携により舞台アグリイノベーション株式会社を設立し、お互いの強み・技術を活かしあうことで、消費者ニーズに応じた精米製造・販売の新たなビジネスモデルを創出した。また、米農家に対しても技術支援や人材育成、米の全量買取等を行い、地域農業の持続的発展に貢献した。

具体的内容

異業種企業の連携

 株式会社舞台ファームは、東日本大震災の津波により、提携農業者の農地も含めおよそ80haの田畑が被害を受け、また備蓄していた米が流出する等、甚大な被害を受けた。
 被災地復興に関する協議会での出会いを機に、生活用品製造卸事業者であるアイリスオーヤマ株式会社の共同出資により、2013年4月に宮城県仙台市に精米事業会社「舞台アグリイノベーション株式会社」を設立。津波・原子力災害被災地域雇用創出企業立地補助金を活用し、2014年に、亘理町に新たな精米工場を建設。
 野菜や米の生産販売ノウハウを有する舞台ファームと、全国への販路を有するアイリスオーヤマの2社の強みを活かし、精米製造・販売を実施。

異業種企業の連携

写真:舞台アグリイノベーション 亘理精米工場
(出典:舞台アグリイノベーション ホームページ)

米の安定供給のための広域的な連携体制の構築

 米農家に対し、全量買取り契約を行うことで、農家の経営を安定化。栽培指導を含め、人材育成・派遣、農機具の共同利用等を支援し、東日本を中心に米の安定供給体制を構築することで、コストダウンにも成功。また最新の検査機器を導入し全ロットの検査体制を確立、安心・安全な米を消費者に提供する仕組みができている。また精米だけでなく、アイリスグループの取り扱う商品群や、餅やパックライスなどにも拡充している。

消費者ニーズに応じた商品開発、販路の確保

 低温精米・低温保存・低温包装により、精米仕立ての美味しさを維持。さらに核家族化の社会情勢を踏まえ小分けパック化することにより、味や品質を確保しつつ消費者ニーズを捉えた商品を開発。有害化学物質や放射性物質検査等を行うことにより、消費者の安全・安心に対する取組も実施。
 米の実需者との売買契約により、販路を確実に確保。アイリスオーヤマの有する販路も活用し、事業規模の拡大を目指して事業を展開中。

消費者ニーズに応じた商品開発、販路の確保

図:トータルコールド製法(左)

消費者ニーズに応じた商品開発、販路の確保

小分けパック(右)

(出典:舞台アグリイノベーション ホームページより)

<出典>(他の事例集等への掲載)
・公益財団法人ひょうご震災記念21世紀研究機構「東日本大震災から7年 事例に学ぶ生活復興」(2018年)p98
https://www.reconstruction.go.jp/topics/m18/04/20180409160607.html

・吉沢文雄「「亘理精米工場」を復興のシンボルに」食品包装(2016年3月)60:3,22-25.
・舞台アグリイノベーション株式会社「NEWS RELEASE アイリスオーヤマ・舞台ファーム農業ビジネスの共同出資会社を設立」(2013年4月)
https://www.butai-agri-innovation.co.jp/news/BAI_130424.pdf

・農林水産省「第2回稲作コスト低減シンポジウム 特別講演「異業種連携の生み出す新たな米ビジネス~新鮮なお米を毎日届けるために~」」(2016年12月)
・復興庁「世界に通用するビジネスモデルを作る」(2015年2月)
https://www.reconstruction.go.jp/topics/main-cat4/sub-cat4-1/20150208_genki40_challenge2.pdf

・日刊工業新聞 ニュースイッチ「アイリスオーヤマはなぜ精米事業に参入したのか? コメ流通の疑問と「3・11」」
https://newswitch.jp/p/296
<活用された制度>
・津波・原子力災害被災地域雇用創出企業立地補助金

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