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民間企業による復興支援
事例名 | 武田薬品工業:「日本を元気に・復興支援」プロジェクト |
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場所 | 岩手県、宮城県、福島県 ほか |
取組時期 | 応急期復旧期復興前期復興後期 |
取組主体 | 武田薬品工業株式会社 |
取組概要
武田薬品工業株式会社(以下、タケダ)は、従来から医薬品支援やマッチングギフトなどによる被災地支援を行ってきたが、東日本大震災においては、1)寄付による長期的な支援、2)従業員による被災地支援、3)震災を風化させない活動の3つの柱のもと、支援に取り組んでいる。特に、寄付による長期的な支援として、東日本大震災発災直後には日本赤十字社などを通じて約7億円規模の支援活動を行い、その後ジャパン・プラットフォームを通じた活動を行った。「日本を元気に・復興支援」プロジェクト(2011年〜2021年)では、「いのち・くらし」「産業復興」「次世代育成」「政策提言」の4分野の12団体・13の復興支援プログラム等に対して総額約32億円の支援を行い、時間の経過とともに変化する現地ニーズに対応できる柔軟な支援スキームを検討し、実践している。
具体的内容
寄付による長期的な支援
寄付を通じた長期的な支援活動として、「緊急」「復旧」「復興」の3段階に分けた支援策を講じた。

「緊急」支援策
災害義援金として3億円を日本赤十字社に寄付するとともに、製薬企業の社会的責任として、日本製薬工業協会および日本OTC医療品協会と協議のうえ、医療用医薬品および一般用医薬品の提供を行った。このほか、海外関係会社からも、総額約1億円(日本円換算)にのぼる寄付金が、各国の赤十字社などを通して拠出された。
「復旧」支援策
武田薬品労働組合との共同により、従業員からの募金に会社がマッチング(同額上乗せ)する形で、認定NPO法人ジャパン・プラットフォームに約7,600万円を寄付した。また、「被災地におけるボランティアに参加したい」との従業員の声を受けて、「特別有給休暇の付与」「ボランティア保険の保険料負担」など、従業員の自発的なボランティア活動をサポートする制度を整えた。
「復興」支援策
被災地の「復興」には、長期・継続的な支援が必要であるとの認識から、「日本を元気に・復興支援」として、一般用医薬品のアリナミン類の収益の一部を複数年にわたって拠出することを決定し、13プログラムを支援した。その一つとして、認定NPO法人日本NPOセンターに対して総額12億円の寄付を行い、「タケダ・いのちとくらし再生プログラム」を立ち上げた。このプログラムは、東日本大震災の被災地の復興を目的として、発災当初から10年間という長期にわたる復興支援を前提にプログラムを形成しており、2011年10月からの5年間を「第1期」として、被災地の社会的弱者に対する福祉・保健支援や、雇用創出など生活基盤の整備支援に従事する36のNPOの活動に対して助成したほか、災害遺族支援や支援側のメンタルケアなどの6つの自主事業を実施した。2016年からの「第2期」では、応急仮設住宅から災害公営住宅への移転に伴う住民主体の新しいコミュニティの創造や、多様な団体による協働の実践を支援した。さらに「NPO経営ゼミ」を東北被災3県(岩手・宮城・福島)で実施し、地域コミュニティと共に持続的に活動できるNPOリーダーの育成を行った。加えてこのプログラムは、NPOと企業の協働事業のモデルケースとして注目されただけでなく、現地NPOの組織基盤強化にも繋がった。また、被災地で長期間にわたり活動する地元NPOを支えるため、「東日本大震災現地NPO応援基金」に2,000万円の寄付をした。

武田工業薬品工業「2019 SUSTAINABLE VALUE REPORT」p88より抜粋
このほか、従業員による被災地支援として、2011年に「特別有給休暇の付与」、「ボランティア保険の保険料負担」などの制度を整備し、従業員の自発的なボランティア活動をサポートしている。
また、震災を風化させないため、社内フォーラムやCSR説明会などの開催や、社内イントラネットに「タケダ東日本大震災サイト」を立ち上げ、ボランティア活動に関する情報を発信するなど、従業員向けの活動も行った。さらに、震災による被害に加え、風評被害によって大きな影響を受けている被災地の消費回復を支援するだけでなく、震災の風化の防止を目的として、被災地域の特産品や支援活動で関わった団体が作成する商品を従業員向けに販売する「(労使共催)復興支援企業内マルシェ」を継続的に開催している。特に、今年度は職場マルシェに加え、オンラインマルシェも開催することによって、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大の影響により仕事が激減している企業・団体を、さらに支援できる体制を整えた。タケダでは、時間の経過とともに変化する現地ニーズに対応するため、義援金などの従来型支援のみならず、多種多様な支援スキームに考え方を広げることで、一歩踏み込んだ支援を実施している。
・武田薬品工業株式会社「2019 SUSTAINABLE VALUE REPORT」(2020年3月)
・Takeda Pharmaceutical Company Limited「2020 SUSTAINABLE VALUE REPORT」(2020年11月)
https://www.takeda.com/4af2e0/siteassets/jp/home/corporate-responsibility/sustainable-value-report/takeda2020sustainabilityreport_en.pdf
・武田薬品工業株式会社 グローバルサイト「人々の思いをつなぎ、新たな暮らしの基盤作りをサポート」
・武田薬品工業株式会社 日本国内向けwebsite 企業市民活動「被災者・被災地支援」
※「日本を元気に・復興支援」の支援先一覧参照