59-2)
民間企業による復興支援
事例名 | ヤマトグループ:東日本大震災 生活・産業基盤復興再生募金 |
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場所 | 岩手県・宮城県・福島県ほか |
取組時期 | 応急期復旧期復興前期復興後期 |
取組主体 | ヤマトグループ、寄付者、助成先等 |
取組概要
宅急便事業を中心に被災者や被災地の産業との関りが深いヤマトグループは、地域の生活基盤の復興と産業の支援として、「宅急便1個につき10円の寄付を1年間継続する」ことを決めた。
ヤマトグループで積み上げた寄付金は、公益財団法人ヤマト福祉財団を通じて被災地の水産業・農業の再生、その他地域を支える病院や保育所などの社会インフラの復興のために使われた。
具体的内容
「東日本大震災 生活・産業基盤復興再生基金」創設と指定寄付金への指定
東北地域を中心とする被災地は、水産業や農業などにより、日本の「食」を支えきた地域であり、ヤマトグループとしては、自社商品である「クール宅急便を育ててくれた」という想いがあった。震災により、復興への長期にわたる時間と多大な費用が必要であることが見込まれた中で、地域の生活基盤の復興と水産業・農業の再生のために、「宅急便1個につき10円の寄付を1年間継続する」という寄付活動を行うことを決めた(2011年4月7日)。
また、公益財団法人ヤマト福祉財団(以下:ヤマト福祉財団)は、内閣府公益認定等委員会の『被災地への早期復興が求められる今こそ、公益財団法人が中心となってサポートを』という呼びかけに呼応する形で、障がい者支援事業に加え、被災地の復興支援を追加する変更を申請し、内閣府より認定を受けた。寄付者が非課税で寄付できる「指定寄附金」の指定を受け、「東日本大震災 生活・産業基盤復興再生基金」(以下:本基金)を開始した。本基金は、個人や法人、団体から広く寄付金を募っていく形態を取り、ヤマトグループは、積み上げた寄付金をヤマト福祉財団に全額寄付することとした。
ヤマト福祉財団では、寄付金の使途の妥当性や客観性を確保するために、第三者による「復興支援選考委員会」を発足させ、被災地の水産業や農業の再生、その地域の生活を支える病院や保育所などの社会インフラの復興のために使われる助成先が決められた。2017年までの最終的な助成事業は31件、助成金累計は142億円余りとなった。
(助成先の事例)
〇 社会福祉法人野田村保育会 野田村保育所再建事業
岩手県野田村の野田村保育所では、月に一度の防災訓練や安全な避難ルート・避難場所を繰り返し検討改善してきた成果により、震災当時、91人の園児と職員が全員無事に非難することができ、「園児全員が奇跡の脱出」と新聞にも取り上げられた。しかし、施設は津波で破壊され、復興に励む保護者が子供を安心して預けられるように、保育所の再建は早急な課題となった。そこで、野田村が助成申請を行い、ヤマト福祉財団が助成を決定した。新しい保育所は、「今までより高台で津波の心配ない所」「より広い敷地で伸び伸びと子どもたちが育てられる場所」という野田村保育所の希望に沿い、1㎞内陸で17m以上の高台に建設さた。野田村が目指す「地域で支える、親子にやさしい環境づくり」の再建の後押しにつながった。
〇 南三陸町 水産産業基盤施設復興事業
宮城県南三陸町では、震災により魚市場や作業所などに大きな被害を受けた。宮城県一の漁獲量を誇る秋サケの漁期を前に、サケを水揚げする魚市場がなければ、漁の存続そのものが危ぶまれ、町内の経済循環の再生の目途が立たなくなる恐れがあった。助成を通じで、サケ漁を始めとする漁業活動や加工業の復旧への一助となった。
・ヤマトホールディングス株式会社「CSR報告書2013」(2013年)p27-30
・公益財団法人ヤマト福祉財団「「東日本大震災 生活・産業基盤復興再生基金」について」