復興の教訓・ノウハウ集

復興の教訓・ノウハウ集

災害からの復旧・復興過程で生じる課題に対し、東日本大震災における状況とこれに応じた官民の取組事例、専門的知見も踏まえた教訓・ノウハウを記載しています。(令和3年3月公表)

55-2)

NPO等による高齢者・子どもの見守りと生活支援

事例名 認定NPO法人カタリバ コラボ・スクール
場所 宮城県女川町、岩手県大槌町、福島県広野町
取組時期 応急期復旧期復興前期復興後期
取組主体 認定NPO法人カタリバ

取組概要

 認定NPO法人カタリバでは、これまで行ってきた子どもへの教育支援のノウハウを活かし、被災した子どもたちのための放課後の学校「コラボ・スクール」を開始した。事業財政を確保するために、委託事業に頼るだけでなく、CSRやクラウドファンディングなどを積極的に活用し、取組を継続している。

具体的内容

取り組みに至るまでの経緯

 認定NPO法人カタリバは、「どんな環境に生まれ育った10代も、未来を自らつくりだす意欲と創造性を育める社会」を目指し、2001年に設立された教育NPO。設立と同時に高校生のためのキャリア学習プログラム「カタリ場」を開始。2006年に法人格を取得してからは、カタリバが心がけてきた「ナナメの関係」(親や教師などのタテの関係でも、友人同士のヨコの関係でもない、教える側と教わる側が共に成長できる関係)のノウハウを伝える活動、2011年の東日本大震災以降は、被災した子どもたちのための放課後の学校「コラボ・スクール」を開始し、津波で家が流されて狭い応急仮設住宅で暮らすなど、落ち着いて学ぶ場所を失った子どもたちに、 学習指導と心のケアを行ってきた。

取り組みの内容

 コラボ・スクールは、震災で被害を受けた小学生から高校生の子どもたちを中心に、放課後の学習支援を行うと同時に、子どもたちが安心して放課後を過ごすことができる居場所づくりと心のケアを行う事業である。津波の被害が大きかった沿岸部地域に二拠点を整備し、女川町では2011年7月(本開講8月)、大槌町では2011年12月(本開講2012年1月)に開校した。2017年からは「コラボ・スクール双葉みらいラボ」を開校し、上記こころのケアと学習支援だけでなく、中高生たちが地域の活性化や自分の興味のある事柄を深める活動を支援している。当初は3年間で地域主体の運営に引継ぎを考えていたが、地元住民からの要望を受けてその後も事業を継続しており、2018年度には1,277人の小中高生がコラボ・スクールを利用している。
 本活動はその後、東北の被災地のみならず、2016年4月発生した熊本地震によって大きな被害を受けた益城町にも広がり、2018年度には990人の小中高生に学習支援と心のケアを行った。

活動方針の変更と財政基盤の強化

 コラボ・スクールの活動期間延長に伴い、2012年時点には運営資金が不足することが予想されていた。1校あたり年間約6千5百万円の運営資金補うため、カタリバは行政機関からの委託費だけでなく、寄付や民間企業からの支援を募った。一般的な物資や金銭の支援だけでなく、講演会開催による依頼料、企業内に専用の自販機を設置して売り上げの一部を寄付する寄付つき自販機の設置などのメニューを用意した。また、支援の返礼として社名を年次報告書で掲載したり、カタリバが被災地を案内する社員研修の実施などの対応を行うことで、企業側もCSR、広報活動に利用できるメリットがある。
 新しい形態の資金調達の形として、熊本県益城町のコラボ・スクールでは、2017年よりクラウドファンディングによる資金調達を開始した。2018年2月には1千万円の目標額に対し、11,841,000円の支援を得た。現在の新型コロナ禍においても積極的にクラウドファンディングを活用し、2020年9月には貧困家庭への支援として3千万円の資金調達目標に対し、32,504,000円の寄付を集めた。
 こうした対応の結果、2017年度には収益全体の約36%を占めていた行政委託費が次年度には約31%まで下がる一方、寄付等の割合も約52%から約62%に上がるなど、収益構造の転換に成功している。なお、収益全体もこの間に約2億円増加している。

活動方針の変更と財政基盤の強化
活動方針の変更と財政基盤の強化

(コラボ・スクールの授業風景(左)と自習風景(右) 出典:コラボ・スクールHP)

<出典>(他の事例集等への掲載)
・特定非営利活動法人カタリバ「年次報告」(2011-2018年)
https://www.katariba.or.jp/outline/annual/

・コラボ・スクールHP「子どもたちへの寄付・募金」
・Readyfor HP「熊本仮設住宅最後の中学生が卒業する日まで放課後学校を続けたい」
https://readyfor.jp/projects/13994

・特定非営利活動法人カタリバHP「【ご報告】「あの子にまなびをつなぐプロジェクト」クラウドファンディング、目標金額を達成することができました!」(2020年9月)
https://www.katariba.or.jp/news/2020/09/01/25303/
<事業費>
・2018年度費用合計 8億7千31万円

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