復興の教訓・ノウハウ集

復興の教訓・ノウハウ集

災害からの復旧・復興過程で生じる課題に対し、東日本大震災における状況とこれに応じた官民の取組事例、専門的知見も踏まえた教訓・ノウハウを記載しています。(令和3年3月公表)

55-1)

NPO等による高齢者・子どもの見守りと生活支援

事例名 NPO法人移動支援Rera
場所 宮城県石巻市、東松島市、女川町
取組時期 応急期復旧期復興前期復興後期
取組主体 NPO法人移動支援Rera、NPO法人ホップ障碍者地域生活支援センターほか

取組概要

 NPO法人移動支援Reraは、避難所生活や自宅避難を行っている障害者や高齢者の通院を主として、応急仮設住宅への引っ越しや買い物などの移動支援を実施している。当初は完全無償でサービスを提供していたが、送迎者の勤務形態や料金形態を見直し、持続的可能性の高い組織運営に方針転換した。また本団体は移動支援のほかにも、被災によって農業に携わることができなくなった被災者を対象にした農作業体験や、行政職員(交通、福祉、復興関係)、事業者、大学など多様なアクターが参加して移動支援における課題について議論するフォーラムの開催などにも活動を広げている。

具体的内容

設立までの経緯

 発災から4日後の2011年3月15日、札幌市を拠点に障害者支援を行うNPO法人ホップ障害者地域生活支援センターが支援のために宮城県石巻市に入った。被災地では、がれきの撤去や避難所設営、物資の整理などを行っていたが、避難所や被災した自宅から病院や仮設浴場への移動、最初の応急仮設住宅が建設された4月1日以降は応急仮設住宅への引っ越しなど、移動手段を持たない交通弱者への支援が必要となった。これには、津波によって石巻地区内の約6万台の車が被害を受けたことが背景にある。このためホップ障害者地域生活支援センターの現地チームは、同じく石巻市へ支援に入っていた社会福祉法人札幌協働福祉会等と共に、移動支援を専門に行う「災害移動支援ボランティアRera」として2011年活動を開始した。その後、応援に来ていた上記団体から地元住民に引き継ぐ形で事業を継続し、2013年2月に「移動支援Rera」の名称でNPO法人化した。

利用形態と体制

 Reraは当初、本サービスの利用について完全無償で回数制限を設けず、さらに24時間対応を行っていた。しかし被災から1年が経つと、資金的にも人員的にも支援体制を維持することが難しくなった。また、公共交通機関もある程度復旧し生活再建も進み始めたため、本団体は「緊急期」としての支援から継続的な支援へと移行する時期と判断した。そこで、送迎対応時間を24時間から8時~18時に変更し、協力費としてガソリン代に相当する額の利用料(後述の「協力費」)を請求することにした。団体は活動に必要な経費の一部を受け取ることができるようになり、また利用者は安価ながら実費を負担することで支援の「もらい慣れ」から脱することとなった。また、2011年10月頃より、送迎ボランティアのスタッフに石巻地域の住民が主体となって関わり始めた。これらによって、震災直後の一時的な外部による支援から、地域住民が中心となった持続可能性の高い活動へと移行していった。
 現在、本団体のサービスを利用するにあたっては①公共交通機関による移動が困難で、②家族などが送迎できず、③高額の交通費支払いが経済的に困難な住民に限られている。対象者は利用に際して「同意書」と「申請書」を団体に提出して登録を行う。利用者から依頼があれば、スタッフや団体に登録しているボランティアが送迎を行う。利用に際しては2kmあたり100円の「協力費」を支払い、週あたりの利用上限は二回と定められている。送迎登録者名簿は2018年度までに1,653名となり、累計の送迎人数は158,965名となった。本事業の運営資金は主として県内外の助成金と寄付金によって賄われている。

具体的な事業内容

 Reraは上記の送迎支援活動以外にも、以下のような活動を行っている。
①外出の目的づくり
 2016年度からは月1回、Reraが手配する付添人つきで娯楽目的の外出支援を開催している。行き先は花見や日帰り温泉、彼岸の時期には墓参りなどに付き添っており、2018年度には163名が146名のスタッフに付き添われ、当該サービスを利用している。また本外出支援の一環として、農作業の体験を行う「レラ農園」を行っている。これは被災や体調不良により農作業の機会を無くした利用者に対し、団体が管理する農園での農業体験を行うものである。利用者は月に数度畑仕事を手伝うことで、野菜の収穫もできる。

具体的な事業内容

(写真:Reraによる移動支援の様子 出典:ReraのHPトップ画像)

②担い手の育成、フォーラムの開催、啓発活動
 Reraの利用者の中には介助を必要とする高齢者や障害者もいるため、福祉車両等を利用した送迎や介助が必要となる。このため、Reraでは国土交通省の認定運転協力者講習の講師に依頼して、移動支援の担い手を育成している。講習は2018年度に3回開催し、計49名が認定講習を修了した。
また2016年度より、移動にまつわる課題を議論するフォーラムを開催しており、行政職員(交通、福祉、復興関係)、事業者、大学など多様なアクターが参加した。2018年度の当該フォーラムの聴講者は150名であった。
 2017年度からは利用者側の啓発活動にも力を入れている。バスなどの公共交通機関を利用するお出かけプランをReraが作成し、ツアーを開催することで、公共交通機関の利用に対する抵抗感を減らす試みを行っている。この「石巻ミステリーツアー」は2018年度に二度催され、計23名の参加があった。

具体的な事業内容

(写真:Rera持続可能な“暮らしの足”を考えるフォーラム in 東北の様子
出典:Reraの2018年度事業報告書)

<出典>(他の事例集等への掲載)
・国土交通省住宅局住宅生産課「東日本大震災における応急仮設住宅の建設に係る対応について」(2011年)
https://www.mlit.go.jp/common/000170090.pdf

・宮城県「みやぎ県政だより 495号」(2011年9月)
・移動支援Rera「事業報告書」(2015年-2018年)
http://npo-rera.org/group.html

・内閣府「復興・被災者支援に取り組むNPO等向け 東日本大震災の被災地におけるNPO法人等による復興・被災者支援の推進に関する調査報告書(事例集)」(2014年3月)
https://www5.cao.go.jp/keizai2/keizai-syakai/uneiryoku/pdf/h25_result.pdf

・公益財団法人未来工学研究所「平成30年度内閣府委託事業 平成30年度東日本大震災の被災地におけるNPO等による復興・被災者支援活動の推進に関する調査報告書」(2019年3月)
https://www5.cao.go.jp/keizai2/keizai-syakai/kizunaryoku/pdf/h30_result.pdf
<活用された制度>
・マツダ・移動支援団体応援プログラム
・ジャパン・プラットフォーム「共に生きるファンド」
・トヨタ・モビリティ基金
<事業費>
・移動困難な住民の送迎支援活動(2018年度):9,777,000円
・情報収集・調査・情報発信事業(2018年度):1,227,000円
・受け取り寄付金額(2018年度):12,340,229円

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