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震災遺構の保存・震災伝承拠点の整備
事例名 | 門脇小学校校舎と大川小学校校舎の保存 |
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場所 | 宮城県石巻市 |
取組時期 | 応急期復旧期復興前期復興後期 |
取組主体 | 石巻市復興政策部 震災伝承推進室 ほか |
取組概要
宮城県石巻市では、震災遺構について地域住民や有識者、NPO等が参画する検討組織の設置や市民アンケート調査の実施など、幅広い意見を収集・整理する検討プロセスを経て、門脇小学校校舎と大川小学校校舎の2つの震災遺構を整備することを決定した。
具体的内容
市は、震災の記憶や教訓を後世に伝えるための各種施策を検討するとともに、専門的視点から提言を得るため、「石巻市震災伝承検討委員会(2013年11月~2014年12月)」を設置した。2014年12月に委員長から市長へ提出された「震災記憶伝承及び震災遺構の選定・保存方法に関する提言書」では、周辺住民の感情に十分に配慮した上で、門脇小学校校舎を震災遺構として保存・活用することの重要性が示された。
しかし、門脇小学校はすでに新門脇地区復興街づくり協議会から、周辺に戸建住宅や災害公営住宅が立地するため、市には解体の要望が出されていた。また、2015年5月には大川地区復興協議会から津波により児童・教職員84人が亡くなった大川小学校校舎を全体保存し、周辺一帯を鎮魂の森として整備する内容の要望が提出された。
市は、提言・要望のあった門脇小学校校舎と大川小学校校舎について、震災遺構として保存した場合の課題や整備費用、維持管理経費等の検討を行うため「石巻市震災遺構調整会議(2015年6月~2015年12月)」を設置した。また、市民アンケート調査や要望書を提出していた2協議会との意見交換、震災遺構に関する公聴会などを実施し、2016年3月に震災遺構として門脇小学校校舎は一部又は部分保存、大川小学校校舎は全体保存を決定した。
その後、門脇小学校校舎の整備に幅広い意見を反映させるため、有識者、地域住民(半数以上は保存反対の方)、NPO、行政機関によって構成された「震災遺構検討会議(旧門脇小学校校舎)(2016年7月~2017年3月)」を設置した。計5回の会議の中で校舎の残し方、遺構の活用の仕方、校舎や周辺環境の利活用、運営・維持管理等の意見を聴取しながら整備方針を策定した。
同様に、大川小学校校舎についても「震災遺構検討会議(大川小学校旧校舎)(2016年7月~2017年3月)」を設置し、計5回の会議の中で整備すべき周辺施設、運営体制、維持管理の方法、遺族への配慮など考慮すべき点、伝承・教育の方法等の意見を聴取しながら整備方針を策定した。
震災遺構(門脇小学校校舎)整備方針

震災遺構(大川小学校校舎)整備方針

・石巻市「震災遺構検討会議(大川小学校旧校舎)」(2018年3月)
https://www.city.ishinomaki.lg.jp/cont/10051100/9005/20170608181730.html
・石巻市「震災遺構検討会議(旧門脇小学校校舎)」(2018年3月)
https://www.city.ishinomaki.lg.jp/cont/10051100/9004/20170608180312.html
・石巻市「石巻市震災伝承検討委員会」(2018年3月)
https://www.city.ishinomaki.lg.jp/cont/10051100/0080/20140811091301.html
・石巻市「石巻市震災遺構調整会議」(2018年3月)
https://www.city.ishinomaki.lg.jp/cont/10051100/9001/20160113092649.html
・石巻市「震災伝承検討会議」(2018年3月)
https://www.city.ishinomaki.lg.jp/cont/10051100/9003/20170608155535.html
・佐藤翔輔, 今村文彦「石巻市における震災伝承・震災遺構に関する3つの検討会議の事例分析:会議手法に対する有効性の検証と配慮すべき点」自然災害科学37(2018年)p47-71
https://doi.org/10.24762/jndsj.37.S05_47
・復興庁 復興交付金制度