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ボランティア・NPO等の人材の確保と平時からの連携
事例名 | 認定NPO法人難民支援協会による多様な被災者支援 |
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場所 | 陸前高田市、大船渡市、気仙郡住田町、下閉伊郡大槌町、釜石市など |
取組時期 | 応急期復旧期復興前期復興後期 |
取組主体 | 認定NPO法人難民支援協会、陸前高田まちづくり協働センター、NPO法人まぁむたかた |
取組概要
認定NPO法人難民支援協会は、東日本大震災において、団体本来の活動である難民支援以外にも8種類の幅広い活動を実施した。コミュニティ支援や支援団体間の関係構築など、被災後2年以上続く課題については地元団体に引き継ぎ、被災地域主体の復興にシフトした。
具体的内容
活動に至るまでの経緯
認定NPO法人難民支援協会は難民・難民申請者への支援を目的に1999年に設立され、2008年に認定を受けた。東日本大震災発災後も、当初は難民への緊急支援事業の実施や、外国人支援の可能性を想定して東北にスタッフを派遣したが、外国人以外の支援ニーズにも直面し、活動を開始。2011年4月より活動拠点を岩手県花巻市に設置して各種支援を開始したが、岩手県陸前高田市での活動が中心になると2012年1月からは、陸前高田市内に拠点を移して活動を行った。なお、支援していた難民から自分たちも支援に行きたいという声があがったため、難民もボランティアとしてスタッフとともに派遣することとなった。
難民支援以外の8種類の支援活動内容
認定NPO法人難民支援協会は難民に対する緊急支援以外にも以下の8種類の活動を行った。
①法律相談事業
三陸沿岸部で不足する弁護士を補うため、難民支援協会は関係のある弁護士を通じて法律相談会を企画した。参加者に分かりやすく気軽に参加できる工夫として、紙芝居を用いて相談の多い「ローン・相続」と「生活再建支援法」について説明を行った。2013年3月31日までに陸前高田市や大槌町などの各地方公共団体で計242回の活動を行い、計3,011名が参加した。2013年4月からは地元のNPO法人まぁむたかたに業務を引き継いだ。
②女性支援事業→③コミュニティ支援事業
女性が避難所生活を送る際のニーズに応えるための支援も、社会福祉協議会や看護士などと協働して行った。女性用下着やナプキンのほかに防犯用ブザーなどが入った「オンナのなっても(なんでも)袋」の配布や、二次性徴を迎える女子学生向けの冊子配布を行った。
2012年4月以降は対象を女性からコミュニティ全体に広げ、アロマサロンや料理教室などの活動に広げていった。2013年3月末までに前述の女性用品セットを6,669セット配布し、相談会には延べ3,253名が参加した。本事業は同年4月以降、NPO法人まぁむたかたに引き継がれた。
④外国籍住民就労支援事業
2011年6月以降は介護職での就労を希望する外国籍住民に対し、日本語の読み書きを教える支援を行った。24名の受講生全員が介護資格を取得し、うち12名が実際に就職を行った。
⑤難民ボランティア派遣事業
難民からのボランティア参加の申し出を受けた難民支援協会は、難民を含む災害ボランティア派遣の手配・調整を行った。20~50人のチームを作り、東京からチャーターしたバスで被害の大きかった陸前高田市でがれきの撤去や炊き出しを行った。2011年4月から11月までに延べ1,863名(うち難民203名)を計148日間派遣した。
⑥ボランティアセンター運営支援事業
陸前高田市には週末で平均100~200名、多い時では1,200名のボランティアが駆けつけたため、災害ボランティアセンターは人手不足となっていた。センターの依頼を受けて難民支援協会は2011年6月から2013年3月末まで、延べ20名を660日にわたって派遣した。派遣先ではニーズの聞き取りとマッチングを行う班とボランティアへの説明を行う班、総務班にそれぞれ分かれて運営をサポートした。本事業は2013年4月より、住民主体のまちづくりを支援するNPO団体である「陸前高田まちづくり協働センター」に引き継がれている。
⑦支援団体ネットワーク構築支援事業
多くの団体が支援に関わる中で、支援団体間の連携が図られていないことによる支援の偏りや非効率が生じた。このため、難民支援協会は団体情報の把握やメーリングリストの作成など団体同士のネットワーク構築を行う「陸前高田市ネットワーク連絡会」を開催した。2013年3月末まで27回の連絡会を開催し、69団体が本連絡会に参加した。本活動は2013年4月より陸前高田市プラットフォームとして活動を継続し、2017年5月以降は本プラットフォームを前身とした陸前高田NPO協会が事業を引き継いでいる。
⑧地元団体立ち上げ・運営支援事業
被災半年後の2011年9月、陸前高田市民よりNPO団体立ち上げの相談があり、難民支援協会が協力にあたった。取り組み内容は震災経験の風化を防ぐために津波の最大到達点全長170kmに17,000本の桜を植樹するという試みだった。難民支援協会の協力の下、実行委員会が組織され、2012年5月に法人取得、2014年5月に認定を受けた。このNPO法人「桜ライン311」は2020年2月現在までに1,704本の植樹を終えている。

(表:難民支援協会による各取組のマトリックス 出典:難民支援協会活動報告書)
・内閣府特定非営利活動法人ポータルサイト「難民支援協会」
https://www.npo-homepage.go.jp/npoportal/detail/013000282
・難民支援協会HP「荒波の連続だった20年。日本に逃れてきた6000人と歩んだ難民支援協会の軌跡」
https://www.refugee.or.jp/20th/3-jar.shtml
・難民支援協会「東日本大震災の支援活動報告書2011年3月~2013年12月」,2014,
・国土交通大臣表彰 手づくり郷土賞(桜ライン311)
・事業時支出合計額(2011年3月~2013年6月):121,584,574円