復興の教訓・ノウハウ集

復興の教訓・ノウハウ集

災害からの復旧・復興過程で生じる課題に対し、東日本大震災における状況とこれに応じた官民の取組事例、専門的知見も踏まえた教訓・ノウハウを記載しています。(令和3年3月公表)

26-2)

建設型応急住宅の確保

事例名 コミュニティケア型建設型応急住宅団地の整備
場所 岩手県釜石市平田(へいた)地区
取組時期 応急期復旧期復興前期復興後期
取組主体 事業主体:
岩手県、釜石市、平田仮設団地まちづくり協議会、東京大学 高齢社会総 合研究機構・大学院都市工学専攻大方・小泉計画研究室

関係機関:
東京大学大学院建築学専攻西出・大月研究室、岩手県立大学狩野研究室、山本理顕(建築家)、株式会社ジャパンケアサービス ほか

取組概要

 建設型応急住宅の団地内において、住戸配置や環境整備を工夫することにより、コミュニティ形成を促進した。また、多様な主体が参画するまちづくり協議会を設置し、官民が協力して入居者の見守り・支援を行う体制を構築した。

具体的内容

プレハブ建設型応急住宅の課題

 東日本大震災で多く供給されたプレハブ建設型応急住宅は基本的に北入り南面並行配置で、住戸は9坪のみ、団地内の戸数が50戸以下になると集会所が設置されず、敷地内には住宅以外の施設が欠如していたため、コミュニティ形成やバリアフリー、買い物・就労・福祉・医療面などに課題が見られた。そこで、岩手県では、プレハブ建設型応急住宅の団地を整備するにあたって、住戸配置や各種仮設共用施設の設置等の工夫を通じて、それらの課題に配慮し、高齢者や子育て層などケアが必要とされる世帯も安心し快適に生活できるコミュニティケア型建設型応急住宅団地の導入を進めた。

釜石市平田地区におけるコミュニティケア型建設型応急住宅団地の整備

1)ゾーニング
 釜石市は東京大学等と連携し、平田総合公園仮設住宅内を「ケアゾーン」「子育てゾーン」「一般ゾーン」に分け、障害者や高齢者世帯が居住する「ケアゾーン」の近くにはサポートセンターや店舗、バスロータリーなど共用施設を配置した。共用施設とケアゾーンの住戸は段差のないウッドデッキでつなぎ、コモンルーフをかけ、バリアフリーや温熱環境改善にむけ工夫した(図1)。

釜石市平田地区におけるコミュニティケア型建設型応急住宅団地の整備

図1:釜石市平田総合公園仮設住宅の配置図(出典:東京大学高齢社会総合研究機構/工学系研究科建築学専攻建築計画研究室)

2)コモンアクセス
 また同団地では、各住戸の玄関を向かい合わせにし、通路とならないスペースを子どもの遊び場や雪下ろし場にして住民同士の自然なコミュニティ形成や見守り、孤独死防止に配慮した(図2)。これは阪神・淡路大震災の教訓から新潟県中越地震で用いられた形式を参照したものであった。

釜石市平田地区におけるコミュニティケア型建設型応急住宅団地の整備

図2:建設型応急住宅の入口の配置(出典:国土交通省)

建設型応急住宅におけるコミュニティケアの取組

 平田地区では、仮設団地自治会、商店街、NPO法人、医療・福祉事業者、釜石市等からなる平田公園仮設団地まちづくり協議会が設置され、各構成員が連携して、気になる世帯の見守り活動や住民交流イベント等、様々な活動を通じたコミュニティケアが実践された。
 建設型応急住宅団地の中心に位置する平田地区サポートセンターは、市から委託を受けた株式会社ジャパンケアサービスによって運営され、看護師や介護福祉士等による生活や介護などに関する総合相談、訪問介護やデイサービス等の介護保険事業、医師による診療等を担い、総合的なサポート拠点として機能した。また、同センターでは、ケアコール(テレビ電話)システムを活用し、職員のローテーションにより24時間体制での見守りを支援した。夜間は1名の職員により、ケアコールの対応や要支援者の巡回を行った。

<出典>(他の事例集等への掲載)
・GOOD DESIGN AWARD復興デザイン賞「仮設住宅団地 [釜石・平田地区コミュニティケア型仮設住宅団地]」(2012年)
https://www.g-mark.org/award/describe/38914

・国土交通省「東日本大震災における応急仮設住宅の建設に関する報告会 資料3 東日本大震災における応急仮設住宅の建設事例」(2011年10月)
http://www.mlit.go.jp/report/press/house04_hh_000294.html

・東京大学高齢社会総合研究機構 工学系研究科建築学専攻建築計画研究室「コミュニティケア型仮設住宅」(2014年)
・一般社団法人全国介護事業者協議会「3.11を忘れない!東日本大震災の教訓を生かす~災害発生時の介護事業者必携マニュアル~」(2013年3月)
・株式会社日本能率協会総合研究所(内閣府委託調査)「平成26年度東日本大震災の被災地におけるNPO法人等による復興・被災者支援の推進に関する調査 報告書」(2015年3月) p21-25.
https://www5.cao.go.jp/keizai2/keizai-syakai/uneiryoku/chosa.html
<活用された制度>
・平成24年度新しい公共支援事業、平成25・26年度NPO等の運営力強化を通じた復興支援事業(平田公園仮設団地まちづくり協議会のコミュニティケアにむけた各種活動費)
・復興交付金(サポートセンターの運営費-岩手県長寿社会課が窓口となり間接補助金として活用)
・災害救助費(応急仮設住宅の設置費、維持管理費、解体費)   等
<事業費>
・コミュニティケアに向けた各種活動費:約百数十万円 / 年

教訓・ノウハウ集トップに戻る