復興の教訓・ノウハウ集

復興の教訓・ノウハウ集

災害からの復旧・復興過程で生じる課題に対し、東日本大震災における状況とこれに応じた官民の取組事例、専門的知見も踏まえた教訓・ノウハウを記載しています。(令和3年3月公表)

21-1)

まちづくりの合意形成プロセス

事例名 集約移転への合意形成とワークショップによる整備計画への住民意見の反映
場所 宮城県岩沼市玉浦西地区
取組時期 応急期復旧期復興前期復興後期
取組主体 岩沼市、玉浦西地区まちづくり検討委員会、東京大学

取組概要

 岩沼市震災復興基本方針でコンパクトシティ化を謳い、複数地区からの集約移転が早期に方針決定され、早期に集約移転への合意形成を図り、大学と連携して復興まちづくりワークショップを重ねて、住民意見を反映した移転地の整備が行われた。

具体的内容

コミュニティを尊重した集団移転

 2011年4月25日発表された岩沼市震災復興基本方針において「地域コミュニティの再生を尊重したコンパクトシティ化」をうたい、2011年11月2日に大きな被害を受けた沿岸部の地区代表者等による「6地区代表者会」において玉浦西地区が集団移転先として選定され、2012年6月11日に集団移転地区のまちづくりを検討する「玉浦西地区まちづくり検討委員会」が設置され、2012年8月には集団移転先の造成工事が着工された。
 集団移転先の選定後、市と東京大学の協働により、2011年11月から2012年1月にかけて玉浦地区復興まちづくりワークショップが開催され、安心安全な地域環境、生活の場の復興、地域に育まれた歴史と文化の継承といった視点から、地域の課題を共有し、地区全体の復興まちづくりのイメージや将来像について話し合われた。ワークショップでは、被災者を中心に市内外の参加者が意見を出し合い、その内容を縮尺1/200の模型に集約するなど、復興まちづくりの構想をとりまとめた。
 その後、造成工事の着工に先立ち、先述のまちづくり検討委員会が設置され、学識経験者、被災6地区代表者及び移転先周辺地区の住民代表者等によって、2012年6月から2013年11月まで合計28回にわたり、まちづくり方針や土地利用計画など移転先のまちづくりについて総合的な検討が行われた。

避難所・応急仮設住宅におけるコミュニティの維持と集団移転への合意形成

 岩沼市では、避難所から地区単位で集まって避難生活が送られており、応急仮設住宅の入居に際しても、避難所で地区代表者に説明会を開くなどして必要戸数や入居方法等を検討し、地区単位で応急仮設住宅に入居することを決定した。応急仮設住宅は2011年4月5日から入居申込受付が開始され、被災地で最も早く4月29日~6月4日で入居が完了した(応急仮設住宅:3箇所384戸/最大379戸入居)。このように、避難所、応急仮設住宅の時点から自治会単位で入居できるよう配慮し、地域コミュニティの分散を防ぐと共に協議できる場と時間を備えたことで、集団移転への合意形成がスムーズに行われた。(岩沼元市長井口氏談 2019年11月27日)

住宅だけでなく、商業施設等の誘致を推進

 復興まちづくり特区として復興産業集積区域を指定し、固定資産税や都市計画税の課税免除により小売業やサービス業の誘致を促進し、周辺地域も含めた住民生活の利便性も向上するような商業拠点の誘致や被災した公立保育所の再建が実現している。

復興まちづくりワークショップによる住民意見の反映

 先述のように岩沼市や大学等の協働により10回にわたるワークショップや28回にわたるまちづくり検討委員会を開催し、住民自らが主体的にまちづくりを提案することにより、歴史あるふるさとの再生に向けて、それまで各地で培われてきたコミュニティを維持しながら、世代を超えた持続可能なまちが形成された。例えば集落のアイデンティティとして「貞山堀の線形をかたどった緑道」や歩いて避難できる小高い丘は「シンボル丘」として整備された。

<出典>(他の事例集等への掲載)
・岩沼市「東日本大震災 岩沼市の記録」(2020年3月)
https://www.city.iwanuma.miyagi.jp/bosai/fukko/shinsaiaplli/kirokushi.html

・園田千佳他「復興まちづくりの計画策定プロセスにおける住民ワークショップの役割に関する研究」日本都市計画学会都市計画論文集,Vol.48,No.3(2013年)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/journalcpij/48/3/48_849/_pdf/-char/ja

・宮城県岩沼市長井口経明「岩沼市の復興事業と課題 集落集約とコミュニティ再生のまちづくりは日本の復興モデル」(2013年9月)
http://www.toshi.or.jp/app-def/wp/wp-content/uploads/2013/10/130926_4.pdf
<活用された制度>
・防災集団移転促進事業
・東日本大震災復興特別区域法に基づく復興特別区域制度
<事業費>
・防災集団移転促進事業 13,807百万円
まちづくりの合意形成プロセス

整備された緑道

まちづくりの合意形成プロセス

商業拠点の様子

まちづくりの合意形成プロセス

公園に隣接する集会所での団欒の様子

まちづくりの合意形成プロセス

玉浦西地区 ランドスケープ基本計画図(出典:宮城県岩沼市)

教訓・ノウハウ集トップに戻る