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賃貸型応急住宅の確保
事例名 | 賃貸型応急住宅の供給に係る膨大な業務処理 |
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場所 | 宮城県 |
取組時期 | 応急期復旧期復興前期復興後期 |
取組主体 | 宮城県、県内市町村、他都道府県、賃貸型応急住宅入居者、不動産関係団体(社団法人宮城県宅地建物取引業協会等)、物件所有者(管理会社等含む)、民間事業者(銀行等)等 |
取組概要
宮城県では被災地で最多の約26,000戸の賃貸型応急住宅を供給した。
入居決定、契約締結、支払い等の業務量も膨大になり、関連業務を外部に業務委託すること等を通じて課題を改善した。
具体的内容
被災地で最多の賃貸型応急住宅を供給
宮城県は人口や賃貸物件が多い仙台市や石巻市を有し、また、住宅を喪失した被災者が多かったことなどから、県内外の多数の被災者を受け入れた。賃貸型応急住宅の供給戸数は東日本大震災の被災地で最多となる最大約 26,000 戸であった。
宮城県では2008年の岩手・宮城内陸地震時に賃貸型応急住宅を活用した経験があり、東日本大震災被災直後は、その際と同様、県が社団法人宮城県宅地建物取引業協会等の不動産関係団体から受けた空き家情報により市町村において被災者の希望とマッチングを行い、不動産仲介業者を通じて契約締結することとした。2011年3月22~24日に、沿岸市町を対象とした説明会を開催し、4月8日付で市町村に通知を出した。契約は県、貸主、入居者の三者による賃貸借契約(借地借家法・後述の再契約からは定期建物賃貸借契約)とした。
その後、4月30日付の厚生労働省の通知により、それまで対象外だった発災以降に被災者自ら締結した契約でも、県名義の契約に置換えた場合に国庫負担対象とする扱いに拡大された。市町村には5月13日付で通知した。この通知等の影響で、申請が当初見込みの10倍以上に急増し、入居決定、契約締結、支払い等の膨大な事務処理対応が必要となった。
県庁内担当者の増員や、市町村への県職員派遣
4月当初は、県保健福祉総務課災害救助法対応チーム8人のうち2人が対応していたが、5月中旬には6人に、7月初旬には13人に増員し、さらに電話対応専門の非常勤職員5人を採用し、膨大な事務処理や問合せに対応した。
窓口である市町村へも、市町村からの要請に基づき県職員を随時派遣し関連業務に当たった。特に石巻市では全体の約25%の申請があり3か月以上にわたって1日14人を派遣した。
契約書審査事務では部内職員10人3週間の応援を得たが、それでも処理しきれず山形県職員5人6週間、全庁から30人9週間の応援を得た。
支払い事務では、県の支払い業務体系やシステムが短期間に膨大な支払い処理を行うことを想定していなかったため、支出関係書類の作成にあたり、部内各課庶務担当職員等に兼務発令を行い、併せて出納局会計課とも調整し、対応した。
このように応援職員や庁内職員の応援、臨時職員の採用を行ったが個別に判断を要する案件は担当職員が対応する必要があり、その件数が多かったこと等から、担当職員の業務負担軽減は一部に限られた。
民間事業者への業務委託
そのため、支払業務を県の指定金融機関である銀行に委託するなど、契約書の審査、支払い手続き、支払明細書の発行等を2011年9月から一部、10月から本格的に民間事業者に業務委託した(表1)。業務委託により開発した管理システムではファームバンキングによる支払データの作成が可能になるなどその後の支払い業務の飛躍的な省力化が図られた。ただし、振込口座の誤り、二重支払い、支払明細書の送付遅延など多くの問題も発生した。そのような問題はみられたが、2011年12月末に遅延していたほぼ全ての家賃の初回支払いを終えることができた。
1)遡及支給の委託
通常の契約による支払い遅延について一定の目途がつくと、厚生労働省の通知以前に被災者自ら契約し支払っていた家賃等を遡及して県が負担する扱いを始めた。管理システムへの契約情報の蓄積が進み、DMや申請様式及び封筒へのデータ差込みによる作成が可能となったことや、市町村の負担軽減のため、対象となる約1万件を県で一括事務処理することとした。そのためには書類審査、電話対応及び返送事務などで常時20名体制を敷くことが必要と想定されたが、応援職員による対応は不可能であったため、外部業務委託した。
2)再契約の委託
賃貸型応急住宅の定期建物賃貸借契約は2年間の契約を結んでいるため、供与期間が延長される場合にはその都度再契約をする必要があった。再契約には貸し主の意向確認、次いで入居者の意向確認を行い、双方同意されれば契約を締結する流れとなる。貸し主が不同意の場合には、プレハブの建設型応急住宅、公営住宅等に空きがなければ、民間賃貸住宅の他の物件に移れるという仕組みを作ったが、他の物件に移る場合の審査や契約業務も膨大な数にのぼるため、決裁行為以外は外部に業務委託を行った。
表1 賃貸型応急住宅供与に係る委託業務

・重川希志依、田中聡、河本尋子、佐藤翔輔「借上げ仮設住宅施策を事例とした被災者の住宅再建に関する研究-恒久住宅への円滑な移行を目的とした住環境の分析-」住総研研究論文集,No.41 (2015年)p145-156,
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jusokenronbun/41/0/41_1313/_pdf/-char/ja
・宮城県保健福祉部「東日本大震災~保健福祉部災害対応・支援活動の記録~」(2012年12月)p245-248
https://www.pref.miyagi.jp/site/ej-earthquake/daisinsaikiroku-2.html
・災害救助法(特例)等
・年間賃料/戸 約66万円/戸(5万5千円/戸×12ヶ月)
(年間賃料に共益費・管理費を含み、退去修繕負担金等のその他経費は含まない)
・年間の民間等への委託費 2012年度(約2億3千万円)