岩手・宮城・福島の産業復興事例集30 2019-2020 東日本大震災から9年~持続可能な未来のために
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2もらえるのではないでしょうか。 私はヨーロッパにもよく行きましたが、ヨーロッパは甘さとしょっぱさを混ぜることのない、はっきりとした味の食文化なんですね。その点、このみそ漬けのクリームチーズは、ヨーロッパのチーズに比べてしょっぱさが控えめで、食べやすいと思います。そこを売りにして、ターゲットを絞って売り込めば、ヒットするのではないでしょうか。田中 続いて、緊急時避難準備区域の中で、いち早く2012年1月に帰還を宣言した川内村からいらしてくださった、株式会社KiMiDoRiの早川さんからお話を伺います。早川 川内村は、帰還にあたり産業の創出が不可欠だということで、ヤマト福祉財団からの助成金と国の東日本大震災復興支援金を活用し、完全閉鎖型の農産物栽培工場を建設しました。その栽培工場の運営会社として設立されたのが、私共、株式会社KiMiDoRiです。し、駅ナカや道の駅などへの卸販売など、直販の比率を増やしているところです。 そうした変化に対応する力を付けるためにも、若い人材を積極的に採用しています。ここにいる小谷は、昨年、地元の高校を卒業した入社1年目の社員で、工場での勤務のほか、SNSの広報戦略を検討する会議にも参加しています。田中 地域の若い人たちの雇用を支えていらっしゃるのですね。大変素晴らしいことだと思います。特に新商品の開発や情報発信には若い人のセンスが重要になってくるでしょうから、小谷さんも、ぜひ力を発揮してください。(写真2) ところで、この「クリームチーズのみそ漬」は、従来の漬け物のイメージを大きく変えましたね。菅野 これからは、お客さまに感動を与えるようなものを作っていかないと駄目だと思っています。 どうぞ召し上がってみてください。田中 なるほど、これもおいしいですね。クリームチーズが素材ですし、これは外国の人にも買って 事業を立ち上げた当初は毎月赤字続きで、半年で運転資金が底を突いてしまうような状況でした。そこで、工場の稼働率を落としてコストを削減し、「売れるものを売れるだけ作る」方針に切り替えました。工場栽培の強みは、収穫時期も収穫量も管理できる点にあります。技術開発部長の兼子に知恵を絞ってもらい、生産管理を徹底し、経営を立て直していきました。「ここで失敗したら村の復興どころじゃない」という思いでみんな歯を食いしばり、最後は意地で、黒字化を目指しました。その結果、2年目には黒字化し、5年目からは補助金なしで黒字を出すことができるようになりました。田中 今、何人ぐらいの方を雇用していらっしゃるのですか。早川 パートタイマーを含め15人雇用しています。全員、川内村と周辺地域の人たちです。田中 作っているのは、レタスが中心ですか。早川 主に3種類のレタスを作っています。「食生活が変化し、漬け物市場が縮む中、お客さまに感動してもらえるような商品を作っていかなければと考えました」(菅野氏)「売れるものを売れるだけ作る」生産調整で黒字化5

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