被災地の元気企業 40
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課題克服のポイント 足こぎ車いすの利用者の生活環境はそれぞれ異なっており、利用者のニーズは多様である。そのため、利用者の目線になってニーズにより細かく対応することが今後は必要になると鈴木氏は感じている。 現在、TESSは代理店を通じて利用者への販売を行っているが、今後は人材不足の課題を克服しつつ各地に販売拠点を設け、ハードとソフト両面で地域に根ざしたサービスの充実を図っていきたいと鈴木氏は考えている。その一環として、大型スクリーンにバーチャル空間を映し出す設備を整え、利用者が屋内にいても外出しているような感覚になる楽しい訓練やリハビリを行える仕組みづくりを進めているところである。 【名 称】 株式会社TESS 【住 所】 宮城県仙台市青葉区荒巻字青葉6-6-40 【代表者】 代表取締役 鈴木 堅之 【連 絡】 TEL:022-399-8727/FAX:022-399-8728 【 H P 】 http://h-tess.com/index.html 【 E-mail 】 info@h-tess.com 「足こぎ車いすで世の中に笑顔を広めたい」という鈴木氏の熱意は、世界に向けても広がっている。既に、ヨーロッパでの販売規格やアメリカ食品医薬局の認証を取得し、本格的に販売 を進める土台はできた。また、先進国だけでなく、ベトナムでは低所得者層を対象としたビジネス展開を推し進めており、その取り組みを発展途上国にも広げようとしている。 足こぎ車いすで世界中に笑顔を広めていくことが、鈴木氏の願いである。 TESSは、起業当時、「技術なし、資金なし、販路なし」という状況で、持っているのは足こぎ車いすで世の中に笑顔を広めたいという鈴木氏の熱意だけであった。しかし、この鈴木氏の揺るぎない信念と決して諦めない行動力が、多くの人々の共感と協力を引き寄せた。 例えば、足こぎ車いすの旋回性能を向上させる差動装置の開発は、南相馬市の㈱ゆめサポート南相馬がコーディネーター役となり、地場企業の協力のもと震災後の困難な状況を乗り越えて実現した。また、大手販売店との代理店契約の締結は、大手販売店の社長から突然連絡が入ったことにより実現した。足こぎ車いすを取り上げたテレビ番組を偶然視聴していた社長の運転手が想いに共感し、社長の耳に届けたことがきっかけであった。 「一人の力には限界があるため、様々な分野の方と広くつながりを持つことがビジネスを成功させるコツだと思っている。ぶれずに一つのことを真面目にやっていれば誰かが助けてくれるので、欲張りすぎず、一人きりで抱え込まず取り組んではどうか。大切なことはとりあえず行動してみること。お金や人脈がなくても、とにかく動き回ればなんとかなると思う」と鈴木氏は語る。 鈴木氏は、誰もが乗りたいと思うデザイン性の優れた足こぎ車いすの生産を目指し、設計図面の作成を、50社ほどの企業に打診したものの断られ続けていた。最後に向かったのが、パラリンピックの競技用いすを製造する世界トップクラスの車いすメーカーである株式会社オーエックスエンジニアリングという企業だった。自社製作にこだわり、他の会社の仕事を一切受けたことがないという会社である。「これだけ断られたのだから、最後も無理だろう」と駄目もとで訪ねてみることにした。 同社へ訪問はしたものの手応えは感じられず何の連絡もないまま2週間が経った。鈴木氏が半ば諦めながら再度連絡を入れると驚いたことに「図面を描いたよ」との返事があったのだ。「辛いリハビリを変えたい!」という鈴木氏の揺るぎない信念と決して諦めない行動力が、日本屈指の車いすメーカーを動かした。そして、す 今後の課題と挑戦 利用者に寄りそった商品やサービスの開発 足こぎ車いすで海外にも笑顔を広めたい TESS 販売代理店 製造委託先 東北大学 半田教授 オーエックスエンジ ニアリング 製品供給 販売 技術 移転 デザイン 及び設計 顧客 販売 揺るぎない信念と決して諦めない行動力で 周囲の協力を引き寄せる 世界的車いすメーカーとの出会いで 商品化に大きく近づく 鈴木氏が目指したスポーティかつ軽量なデザインの足こぎ車いすが完成した。 (すずき けんじ) 97

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