被災地の元気企業 40
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挑戦事例 医療福祉機器関連産業、仙台市 取り組み(事業内容) 自動歩行の能力を呼び起こす足こぎ車いす TESSは東北大学発研究開発型ベンチャー企業として、神経調節技術を活用し、世界初の足こぎ車いす「Profhand」を開発した。 足こぎ車いすとは、半身麻痺の人や要介護高齢者など歩行障がい者が、自身の足でペダルをこぎ、移動することができる車いすだ。半身麻痺の人が足こぎ車いすに乗り始めると、驚くことにそれまで動かなかった片足も自然とペダルをこぎ出し、両足で車いすをこげるようになることが多いという。 なぜ、動かなかった足でペダルをこげるようになるのか?人間は本能的に「足を交互に動かそう」という自動歩行能力をもっており、車いすのペダルをこぐことで、筋肉を動かす中枢神経に刺激を与え、自動歩行能力を呼び起こしているのだ。この一例として、脳梗塞により43歳で半身不随となり、29年間車いすでの生活を強いられていた女性は、足こぎ車いすとの出会いにより、自分の脚力だけで動けるようになった。「いつかハイヒールを履いて歩きたい」足こぎl 車いすは利用者の想いを叶える乗り物になっている。 これまでリハビリを行う多くの人は、希望を見失ってリハビリを途中で諦めてしまうという厳しい現実があった。しかし、今まで動かないと診断された足が、足こぎ車いすのペダルをこぎ出す姿に、歩行障がい者自身のみならず介護している家族にも笑顔が生まれ、リハビリによって希望を見出せるようになったのだ。 足こぎ車いすで 世の中に笑顔を広めたい ㈱TESSは、医療・介護・福祉分野から高い評価を受ける「足こぎ車いす」の研究開発・販売を行う東北大学発のベンチャー企業だ。 代表取締役の鈴木氏と足こぎ車いすの出会いは2004年、当時医療機器会社の営業マンだった鈴木氏が、東北大学の研究室を訪ねた際、足こぎ車いすの試作品を偶然に目にしたことだ。 足こぎ車いすは、東北大学大学院医学系研究科「運動機能再建学分野」の半田康延教授(当時)らの医師グループが、電気刺激によって下半身不随者の歩行を実現させる研究の一環として開発したものだが、商品化には至っていなかった。その理由は、重さや操作性、採算性や販売先開拓など、実用化に向けて多くの課題を抱えていたためである。 「足こぎ車いすがあれば、歩行障がいを抱える方やそのご家族が希望を取り戻し、楽しみながら機能訓練に取り組んでもらえる」という半田教授の想いに、鈴木氏は感銘し、足こぎ車いすを実用化させて世の中に笑顔を広めたいと決意、2008年に起業した。 鈴木氏は足こぎ車いすによって一人でも多くの方が楽しくリハビリに取り組み、障がい者も健常者も共に希望に満ちた明るい毎日が送れる社会の実現を目指している。 ビジョン ● 障がい者も健常者も共に生活に希望を見出せる社会の 実現を目指す ● 想いを叶える乗り物を提供する 株式会社TESS 代表取締役 鈴木 堅之 氏 TESSの挑戦 足こぎ車いすの実用化に向けた東北大学発ベンチャーの挑戦 96

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