被災地の元気企業 40
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課題克服のポイント 今後の課題と挑戦 KAI OTSUCHIの設立においてはSHIPを立ち上げた関西大学と大槌町による支援が大きい。SHIPにおいて関西大学は、プロジェクト全体の枠組みをプロデュースしつつ、自治体と企業の結び付きをコーディネートする役割を担った。また、事業開始においては人件費等の運転資金の確保が大きな課題であったが、大槌町がICT技術に精通する人材育成を目的とする緊急雇用創出事業をKAI OTSUCHIに委託することにより、同社の人件費の負担を軽くすることで事業立ち上げが可能となった。 産学官連携の創業支援により事業開始 産学官による支援により人材を育成 アプリ開発には地理的な制約がないため、アプリ開発のノウハウさえあれば首都圏との賃料水準の違い等から一定の価格競争力を保持できる。そこで、プログラム制作の経験が無かった同社の従業員をICT技術に精通する人材に育成する必要があった。この点については関西大学のコーディネートにより、関西地方のアプリ制作会社からCSR(企業の社会的責任)の一環とし て無償でのICT訓練の申し出があり研修を行うことができた。関西から講師を招き大槌で研修を行ったほか、eラーニングでの研修やSkypeを利用した面談などにより4カ月間の研修が行われた。その成果として完成した電子書籍はiPadアプリ「インディアンの森」としてリリースされ、研修生の大きな自信となる。 現在もこの会社による支援は継続されており、同様の研修プログラムにより人材が育成されるとともに、継続的に技術上の相談を行う等の関係が継続している。 また、3Dイメージの作成に必要な3次元CADモデリングのノウハウについては、岩手県、北上市等が主体となって実施する、いわてデジタルエンジニア育成センターによる技術支援を受けている。 ニッセンとの連携により、アプリ開発企業 として必要なノウハウを習得 「今後の人材育成上の課題は、企画力およびマーケティング力の向上」と平舘氏は話す。この課題を克服するため、通信販売大手の㈱ニッセンが大槌町に移動図書館を寄贈したのをきっかけに、アプリ人材育成で地域振興を目指すビジョンに共感した同社との連携が始まった。2014年5月から企画力およびマーケティングのノウハウを有する高度なICT人材を育成する取り組みをニッセンと共同で行っている。例えば、企画からアプリ開発へつなげる試みとして、週1回の遠隔ミーティングにおいて、ニッセンが企画書作成や企画力向上のアドバイスを行っており、平舘氏はICTの会社としてさらに信頼力のある組織を構築することを目指している。 産業振興のハブとなり 住民主体の地域活性を目指す KAI OTSUCHIは地域活性化も事業目的とする社団法人組織であり、平舘氏はKAI OTSUCHIの将来的な方向性をICT関連事業だけに限定することは考えていない。また、ニッセンと共に地元の中高生を対象にアプリコンテストを開催するなど、将来の雇用拡大のために起業支援にも取り組む。平舘氏は、「地域住民主体で新たな起業を生み出し、その事業が自律的に運営されるまでサポートしていきたい」と話す。 またKAI OTSUCHIでは、アプリ事業の顧客と連携して、大槌町の産業振興の企画立案にも取り組んでいる。目指すのは、「自社の利益だけではなく、アプリ事業 を通じたつながりで 産業振興のハブとな り、大槌町の住民主 体による地域活性化 に貢献すること」で ある。 【名 称】 一般社団法人KAI OTSUCHI 【住 所】 岩手県上閉伊郡大槌町赤浜1丁目 3-23 (三協印刷内) 【代表者】 理事長 平舘 理恵子 【連 絡】 TEL /FAX : 0193-41–2400 【 H P 】 http://www.kai-otsuchi.com/ 【 E-mail 】 info@kai-otsuchi.com (ひらだて りえこ) 95

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