被災地の元気企業 40
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被災地は今こそ、ブランディングと情報発信の強化を監修委員牛尾陽子失った既存販路の回復と新規市場の開拓は、被災地企業にとって最大の課題である。発災から4年が経過し、いわゆる「応援消費」は全国的に根付いてきたものの、今後それがより大きなあるいは継続した盛り上がりを見せることは期待しにくい。この状況を打開し新たな成長局面に入るために、被災地企業は「ブランディング」と「情報発信強化」で競争力の向上を図る必要がある。「ブランディング」とは、顧客の視点から良質な商品を継続的に提供し、消費者始めステークホルダーの共感・支持を確立することである。ブランディングの成功は、商品の強力な差別化、リピート購入、ブランドロイヤルティをもたらし、価格競争の回避や販促コストの低減につながる。被災地企業が注力すべきは、既存品と比較して「新しいカテゴリー」を創造し、優位性を築くことである。すなわち何が新しいのかを明確にし、既存品をしのぐ品質と価値を消費者に提供することである。また、「情報発信強化」の手段として、出版、イベント、報道、地域社会への参加・貢献、ツール(ロゴマーク、パンフレット、HP等)作成、ロビー活動などがある。日経リサーチアワード「地域ブランド大賞2013」では、岩手県が「産品魅力度躍進賞」を受賞したが、食の総合ポータルサイト「いわて食財倶楽部」による情報発信や、ソーシャルメディアを活用した食のサポーター獲得の取り組みが高く評価された。この事例集では、個々の企業の取り組みを主に取り上げている。今後各社がそれぞれの「ブランディング」と「情報発信強化」を目指すことは勿論であるが、岩手県の例に見るように、行政と民間が一体となった震災復興、観光客誘致、産品売り込みが効果的と言える。さらに「ブランディング」においては、被災地間の連携や「東北ブランド」確立といった広域的な取り組みも有効であろう。復興の加速化と「新しい東北の創造」のため、我々がなすべきことは多い。しかし、どの時代にも課題はあり、人々はそれを乗り越えてきた。前向きな挑戦が、被災地企業の未来を切り拓いてゆく。コラム(公益財団法人東北活性化研究センターフェロー)92

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