被災地の元気企業 40
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挑戦事例 農林漁業、二本松市 福島の大地に 「きぼうのたね」をまく 大学在学中から起業を考え、起業サークルを立ち上げるなど様々な活動を行ってきた菅野氏。卒業後は農業をビジネスとして展開することを目標に、出身地の二本松市東和地区に戻る。 まずは3年間、農業の生産現場を学ぼうと考え、父親が経営する遊雲の里ファームで実家の農業に従事するためである。東日本大震災が発生したのはそのような経緯で就農してからちょうど1年後のことだった。 震災により、東和地区は、深刻な放射性物質による汚染は免れたものの、農産物の放射線量計測などの対策が必要な状態となった。それ以上に問題となったのは、福島県の農産物に対する風評被害だった。「福島の農作物は大丈夫なのか?」という全国の消費者の不安が買い控えにつながり、東和地区の米や野菜も売上が激減した。 福島の農業を元に戻すには、まずは風評被害の払拭が優先課題であったが、一言で風評被害の払拭といっても何から手をつければよいのかわからなかった。悩んだ末に、菅野氏は、安全・安心を消費者自ら身をもって体験してもらう農業体験プログラムにたどりつく。実際に東和地区で農作業を体験してもらうことこそ「福島の農業の今」を知ってもらう絶好の手段と考えたからだ。以前から温めていた、農業を体験したことのない人をターゲットにした就農体験。「人と自然のつながり」「地域と都市のつながり」を東和地区の農業を通じて広げていきたいという菅野氏の挑戦が始まった。 取り組み(事業内容) ビジョン ● 種をまくことにより人が集まり、人と自然がつながる新しい農業を創る ● 風評被害を払拭し、有機栽培で商品の魅力と収益力の向上を目指す 都会の人と地方の自然をつなぐ 体験プログラム きぼうのたねカンパニー㈱では、「自分の目で確かめて、福島の農作物が安全かどうかを判断してほしい」との思いから、農業体験プログラムを企画運営している。大手旅行会社や周辺農家の協力により、2013年は4回、2014年は8回開催するなど、年を追う毎に参加希望者は増加している。 参加者にはリピーターが多いのも特徴の一つであり、旅行会社が企画する体験ツアーの他に市民団体からの参加希望や、大学の授業の一環として参加する学生も多い。最近では、復興支援よりも農業自体に魅力を感じて参加する人も増えてきた。また、東和地区の人々とのふれ合いに魅力を感じて毎年参加する人も少なくない。 有機栽培農産物販売 また、きぼうのたねカンパニーでは、有機栽培で育てた畑直送の「旬の有機野菜セット」の他に「棚田米」、「杵つき餅(生切り餅)」、「完熟無農薬トマト」をインターネット及び福島県内外のマルシェにて販売している。農業体験プログラム参加者による購入も多い。安全、安心かつ美味しいと評判になっているほか、マルシェでの販売は消費者と直に接することで、より農業を身近に感じてほしいとの思いで取り組んでいる。 代表取締役 菅野 瑞穂 氏 きぼうのたねカンパニー の挑戦 きぼうのたねカンパニー株式会社 農作物の風評被害を乗り越え、農業で地域の活性化に挑戦 88

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