被災地の元気企業 40
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課題克服のポイント 今後の課題と挑戦 「地域活性化」構想で農業の衰退に 歯止めをかける 「具体化したのは震災後ですが、『ワンダーファーム』事業は震災前から温めていた構想でした」と元木氏は語る。「不安定な収益構造や後継者問題で農業の担い手がどんどん減っていく。従来型の農業だけを続けていては耕作放棄地が増え、やがて日本の美しい稲田が失われてしまう」との危機感から、元木氏は農業の6次化・高付加価値化、さらには新たな雇用を生み出す場の創出が不可欠との想いを次第に強くしていった。 復興支援制度の活用により構想を実現 一方、震災後の元木氏は、原発事故による風評払拭にあたり「情報」の重要性を再認識し、前にも増して「自社の広報担当として情報発信に務め、常にアンテナを張り、ネットワークを広げる」ことを意識し続けた。そんな折、復興の象徴となる6次化プロジェクトを検討していた福島県及び県内金融機関から、ワンダーファーム構想を熱く語る元木氏に声がかかった。 元木氏は構想の実現に向けたチーム体制について「私一人の力でできることは限られています。 農業生産法人としての自社の強みや自分の経験を生かしつつ、足りないリソースは行政も含め外部専門家の方々の力を借りてより良いものをつくり上げていく。まさに復興への道のりは総力戦だと思います」と話す。 行政のサポートを得ながら、元木氏は2013年4月にワンダーファームいわきの運営主体となる㈱ワンダーファームを設立。資金調達面では、津波・原子力災害被災地域雇用創出企業立地補助金の採択を受けたほか、2014年6月には「ふくしま地域産業6次化復興ファンド」による第1号案件としての投資が決定した。また、元木氏の志に共感したエア・ウォーター㈱グループからはパートナー企業として賛同を得ることができ、資金面のみならず加工技術や販路開拓など事業面でのノウハウ共有やシナジー効果が期待される。 ワンダーファームイメージ図(同社HPより) 2015年春のオープンに向けて 農業参入企業との協業により 次世代を担う農業経営者の育成 とまとランドいわきにおけるトマト生産販売の傍ら、2015年春のワンダーファームのオープンに向け元木氏は多忙な日々を送っている。「日々刻々と状況が変わっています。『これで良し』と一旦は仕上げた事業計画であっても、外部専門家からの助言や改めて違う角度から検証し直すことで、修正すべき箇所が多々生じてきます。オープン当日まで気が抜けません」 最高の内容でオープンを迎えるべく、外部専門家の助言等を得ながら新規事業の準備に奔走している。 「ワンダーファーム」事業と並行する形で元木氏は次の挑戦にも臨む。2014年9月には、とまとランドいわきと東日本旅客鉄道㈱との間で合弁会社「㈱JRとまとランドいわきファーム」を設立。2016年春の栽培開始を目指しており、同社が植物工場方式で生産したトマトはJR東日本のグループ会社や隣接する「ワンダーファーム」に提供される予定である。「JR東日本さんのコンセプト『地域に生きる』に共感し合弁事業を決断しました。今後さらに農業参入企業は増えると思いますが、農業は資金力だけでは決してうまくいきません。生産技術などのノウハウを持つ農家と流通・販路などのインフラを持つ企業が互いの長所を持ち寄ることで真に強い農業が生まれると思います。また、この合弁会社では志ある若手農業者に次世代の農業経営を経験してもらい、将来的にはこれをロールモデルに全国各地に横展開していきたい」と語る元木氏。近い将来、いわきから次世代を担う有望な農業経営者が輩出される日が来るであろう。 レストランイメージ図(同社HPより) 【名 称】 有限会社とまとランドいわき 【住 所】 福島県いわき市四倉町長友字深町30 【代表者】 代表取締役 鯨岡 千春 【連 絡】 TEL:0246-66-8630/FAX:0246-66-8640 【 H P 】 http://www.sunshinetomato.co.jp/ 【 E-mail 】 info@sunshinetomato.co.jp 87

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